August 17, 2006

みたび若葉書店へ

▼まず最初に、私の元に「若葉書店への行き方をできればもう少し詳しく教えて欲しい」とのお問い合わせがありましたので、その点について少々説明しておきましょう。
 若葉書店は先に書いたように名古屋市熱田区にあります。もっとも至便に行くには、地下鉄名城線六番町駅で下車して、そこから水行十日、陸行一月した地に若葉書店はあります。これでだいたいのところは見当がお付きになりますでしょうか。

▼三度、若葉書店へと赴く。日を置かずに何度も通う理由は、初回二度目と訪れた際に買うべきか迷いながらも見送ってきた本を、幸いにも昨日パチンコで大勝したおかげでようやく買う踏ん切りがついたからである。
 若葉書店に向かう前に時価調整も兼ねて近くのGEOに。中古ビデオの大安売りセール実施中で、どれも一本100円から180円という安さ。その中からロック、ストック&ワン・ビッグ・ブロックを購入する。ガイ・リッチー製作総指揮の「ロック、ストック」シリーズの一本である。シリーズ中、どれを持っていないのやらさっぱり判らないのだが、値段が180円では買わずに済ますわけにはいかないもんな。
 古本では戸梶圭太の「牛乳アンタッチャブル」(双葉社、2002、100円)。

▼そうやって時間を潰しながら開店時間を待って、若葉書店に。しかし、開店時間を過ぎたというのに、店の扉はまだ固く閉じられたままだ。
 ……う~む、もしかしてもう潰れちゃったのかも。こりゃ、24時間営業のコンビニをオープンしたのはよいが店員のバイト募集に失敗して、一人きりで切り盛りしようとしてついに四日目で倒れて店を閉めてしまった俺の友達に次ぐ記録的速さだよなぁ。
 と思ったが、近くの店で昼飯を喰って頃合をみてもう一度覗きにいくと今度はようやく店が開いていた。「何で時間通りに店を開けないんだよぉ」とぽかぽかに文句を言うと、「名古屋に時間通りに店を開ける古本屋なんて一軒も無いわい」と開き直って不貞不貞しく強弁するぽかぽか。他の店の悪いところだけを真似してどうするか!

で、この日に買ったのは

 横溝正史「探偵小説五十年」(講談社、S52、2800円)
 飛鳥高「死にぞこない」(光風社、S35、5000円)
 ニコラス・ブレイク「呪われた穴」(早川ポケミス、S30、800円)
 村田ビデ雄「ザ・ホラー・ヒーローズ」(シンコー・ミュージック、1988、500円) の四冊。
 ポケミスの「呪われた穴」はダブリとなるのだが、俺の手持ちの「呪われた穴」は街を行く通りすがりの廃品回収のトラックの荷台から見つけ出しその場で百円で買い取ったという伝説の本だったのだが、残念ながら裏表紙欠の欠陥本なのでこれが買い直しとなる。
 これでようやくこの店では欲しい本はほぼ買い尽くしたので、しばらくは来なくても済むな。これで後は、店主の店売り用のダブリ本もそろそろ数が尽きてきて仕方なく手持ち本を棚に並べるしかなくなる日が少しでも早く来ますように、皆さん、せいぜい若葉書店で古本を買ってやって下さいな。その頃にはまた顔を出しますから。

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August 15, 2006

若葉書店開店・その後

Wakaba3▼奥ゆかしいというのかまるで商売っ気がないというか、はたまたやる気が全くないと言うべきか、ぽかぽかは自分の店が開店したことを世間に少しでも知られるのを怖れているかと思えるほどにひっそりと古本屋を始めた。普通ならせめて開店記念の粗品を配ったり常連客となりそうな客には新規開店記念全品無料サービスを挙行するとか紅白餅を屋根から撒くとかAV女優を呼んで店内で撮影会を実施するとかするもんだろうに。何せ自分のホームページで開店の告知すらしてないんだもんなぁ。故に「若葉書店」開店に至っても新規オープンらしい華々しさは一切見受けられない。開店前日に訪れた際には、あまりの殺風景な店内の雰囲気に「何なら開店祝いの花でも贈ってやろうか」とついつい口にしてしまった。「何ならついでに店のPRもしてやるぞ」
 週が明けた月曜日、開店祝いの花を携えて再度「若葉書店」に向かう。おっと、PRをしてやるぞと言った割には前回の日記では店の詳細をまるで書いていなかった。
 若葉書店は名古屋市熱田区六番町の交差点から南に向かったところ、俺の足で約20秒ほど掛かったので、ほぼ200mの地点にあります。営業時間は昼の12時から夜九時まで。今のところ火曜定休の予定ですが、客が来なければそのうちに定休日はどんどんと増えていくかも知れません。これ以上詳しい住所や店の電話番号は、俺のライヴァルを増やすことにもなりかねないので残念ながら教えられないね。
 店に到着すると、前回同様、またガラス戸が閉まっている。力ずくで何とか戸をこじ開けて店内に入る。
「うわっ、未読さん。どっ、どうやって店の中に!?」
「いや、錠の部分のガラスをこのガラス切りを使って……。いやいや、そんなことはどうでもいい。何で店を開けてないんだよ。もうオープンしたんだろにっ!」
「いっ、今、開けようと思ってたとこなんですよぉ」

Wakaba4▼「ほれっ」と買ってきた可愛らしい鉢植えの花を渡す。写真が小さくてよく見えないだろうが、花に添えられたカードには祝 「笑っていいとも」ご出演と書いてあるのだ。
「この花、きっと高かったんでしょうね」と値段ばかり気にするぽかぽかであった。そんなぽかぽかを安心させるように、「心配しなくてもいいぜ。その代わりと言っちゃあ何だが、毎月、みかじめ料としてショバ代を戴きに来るから」と言う俺なのであった。地回りのヤクザもんかぁい、この俺は!

 「ところで……本当に店はオープンしたんだろうな?」と尋ねる俺。思わずそう訊きたくなるくらい素っ気ない店内の様子なのである。その問いに対して「えぇ、日曜日から店を開けました」と答えるぽかぽか。よぉし、ホントに店を開けたとなれば、これからは俺の好き放題やりたい放題である。前回来た時にはまだ開店前ということもあり多少の遠慮もあったのだが、これからは何の気兼ねもいるものか。

 ということで、この日買ったは次の本。
 E・ガボリオ「ルコック探偵」(旺文社文庫、1979、500円)
 アルフレッド・ジャリ「馬的思考」(サンリオSF文庫、1979、1,000円)
 三橋一夫「ぼんくら社員と令嬢」(春陽文庫、S46カバ欠、100円)
 野田昌宏「宇宙船野郎」(秋田書店、S45、1,000円)
 W・ジョンストン「ベン・ケーシー 暗い秘密をもつ少女」(学研新書、S38、500円)
 加納一郎「SFディメンション・クイズ」(日本文芸社、S60、500円)
 友成純一「ホラー映画ベスト10殺人事件」(扶桑社、1989、300円)
 立川談志「ナムアミダブツ」(光文社カッパブックス、1998、300円)
 小松左京「日本を沈めた人 小松左京対談集」(地球書館、S49、800円)
 河野典生「憎悪のかけら」(七曜社、S37カバ欠、300円)
 市来英雄「海底に咲く花」(南日本新聞開発センター、S52、1,500円)
 中野実「火星から来た男(上・下)」(東京文藝社、S33、1,500円)

Wakaba1「ルコック探偵」と「馬的思考」はダブり確定。河野典生「憎悪のかけら」もダブり間違いなしだというのに、なんで買っちまうんだろ。しかもカバ欠なのに……。「SFディメンション・クイズ」「ホラー映画ベスト10殺人事件」の二冊もダブっていないことを祈るばかりである。
 わけの分からない本は最後の二冊だ。「海底に咲く花」の副題は「SF虫歯予防大作戦」。とほほほほ。歯医者さんの書いたSF仕立ての虫歯予防啓蒙本のようである。「火星に咲く花」ならばまだ聞いたことはあるんだけどねぇ。内容は「虫歯版・ミクロの決死圏」といったところ。時は21世紀後半。海底都市マリンフラワーでは世界連邦の大立て者であるミスターX氏(覆面レスラーかっ!)が突然の病に倒れ死の淵を彷徨っている。その病の原因は「虫歯」であった(おいおい)。ミスターXの虫歯を治療するために、極超小型ミクロロケット「スーパーオーラル一号」が出動することになった。しかし、悪の宿敵‘ミスターキラー’(覆面レスラー2号かっ!)がそうはさせじと様々な妨害を仕掛けてくる(例えば砂糖水を飲ますとか……、いや、マジで(笑))。スーパーオーラル一号は虫歯の原因であるプラーグ怪獣と戦い、無事、ミスターXを死の淵から救い出すのであった。最後はミスターXが歯磨きをする場面で大団円。めでたしめでたし。

 ……何じゃい、こりゃあ!

 おまけにこの本、小説部分は本の二分の一までで、残り半分は「砂糖と虫歯」という単なる虫歯予防のエッセーなのである。もしかして騙されたのか、俺は?

 もう一冊は、中野実の「火星から来た男」。ぽかぽかがしきりにこの本を薦める。「これ、SFに間違いありませんぜ、旦那。何せ題名が『火星から来た男』ですもん」
「だけど、中野実といえば小説のタイトルに『お嬢さん』だとか『坊ちゃん』だとか『令嬢』だとかの付いた明朗小説を書きまくってた人だろ。SFなんて書いてたかなぁ」
「間違いないですってば。何せ『火星から来た男』というくらいなんですから」とぽかぽか。
 仕方なく買って帰るが、家に帰って目次を眺めると、最初の章のタイトルがいきなり「へそくり問答」だ。SFか? 続く章題を見ていっても「内助の功」だとか「鎌倉夫人」というようなものばかり。これってSFか、ホントに??? よもや騙されたんじゃあるめぇなぁ?

Wakaba5▼そうこうするうちにぼつりぼつりと他の客も入ってくる。お世辞半分に「おお、店は結構流行っているようだなぁ」と言うと、ぽかぽかは客がいるにも関わらず「いやぁ、そうでもありませんよ。開店した日から毎日、2時間立ち読みに来る中年男だとか、ろくな客が来やしない」とこれ見よがしに大声で言う。つくづく客商売に向いていない奴である。客の一人が一本のエロビデオのジャケットを俺に向かって見せながら、「お客さん、このビデオに出ている××××子って知ってる?」と尋ねてくる。「いや、知りませんが」と正直に答えると、「そうかぁ、2時間ドラマの脇役あたりではそれなりに有名な女優なんだけどねぇ。顔に見覚えはない?」と残念そうに言う。「2時間ドラマとかはほとんど観ませんし」と答えると、「普通のAVみたいに単に裸が出てくるモノじゃなくて、最近はこの手のドラマ仕立てのモノにハマッててねぇ」
「はぁ、そうですか」と気のない返事をすると、「いやね、あんたも好きそうな顔してるから、てっきり同じ趣味なのかと……」。
 ……確かにろくな客は来ていないようだった。

▼帰り際に、先日買った本の中から「乱視読者の冒険」を返品する。家に帰ってじっくりと表紙を見たら、間違いなく持っていると確信できた本なのであった。確信したどころか、この本、別府の古本屋で買ったことまで思い出したわい。

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August 14, 2006

若葉書店開店

▼いやぁ、悪い悪い。すっかり放置しておりましたぁ。放置している間にも新刊を山ほど買ったり名古屋オフがあったり新刊を山ほど買ったり面白いことがあったり古本をちょびっと買ったり新刊を山ほど買ったりDVDを山ほど買ったりしていましたが、そのあたりはボチボチと遡って書いていくつもり。で、今日はとりあえず若葉書店開店速報を。

▼旧「絶好調」メンバーであり、なおかつ名古屋オフ常連のぽかぽかが--いったいどんな不祥事をしでかしてしまったのかは知らないが--いきなり堅い仕事を辞めて古本屋を開業すると聞いたのは数ヶ月前のこと。旧「絶好調」メンバーの中からは喜国雅彦さん、kashiba@猟奇の達人さん、よしだ まさしさんと古本に関する書き物をする方々も増えたのだが、勢い余って自ら古本屋になってしまったというのはさすがにこのぽかぽか氏が初めてだ。まさに「太鼓持ち 揚げての末の 太鼓持ち」という川柳を地で行く人生を過ごしているわけで、これはこれで実に目出度い(つーか、人ごとなんで面白い)。
 かつて古本まゆこの俺一人をターゲットにして、俺の家から車で五分という地の利の場所に開店して、仕方ないので俺も一ヶ月間で古本についつい数千円も散在してしまったというヒソミに倣ったのかどうか知らないが、今回、ぽかぽかが開業する店の所在が俺の勤務先のすぐ近く……というのも、あくまで俺一人を客としてのターゲットに絞った戦略なのだろうか。たぶんその戦略は失敗すると思うけどなぁ。
 とりあえず前の仕事は三月に辞めたことは知っていたのだが、その後、古本即売会で遭ったりした際に開店時期を尋ねても、ぽかぽかから戻ってくるのは「どうしようかなぁ、やっぱり止めようかなぁ」というようなノラリクラリとした返答ばかり。正直、こりゃダメかも……と思い始めていた頃、知り合いの古本屋からぽかぽか氏が名古屋の古本屋組合に加入したという噂を聞きつけた。どうやら入札に参加して本を買いまくっているらしい。しかし、その割には一向に店を開ける気配がない。何軒かの古本屋に聞き込みをしても開店情報はさっぱり入ってこない。
 こりゃあ、店を開けるまでにはまだまだ時間が掛かりそうだなぁ……と思っていた先の金曜日、店の前をたまたま車で通りかかったら、それまで無かった店の看板が大きく掲げてある。用事を済ませた後で念のために店の様子を確かめてみることにした。
 しっかりと閉じられている店のガラス扉を何とかこじ開けて、店内に侵入を果たす。中にはびっくりした顔のぽかぽかが……。「みっ、未読さん。どうやって店の中に?!」
「そこの自動扉の扉をこじ開けて。いや、そんなことはどうでもいい。店はいったいいつオープンするんだよぉ?」
「本の整理はまだまだなんだけど、めんどくさいんで明日にでも開店しようかと……」とぽかぽか。
 たまたま通りかかってみれば明日開店とは、こりゃまたお馴染みの古本の神様のお導きに違いない。「おい、だったらもうこの店の本を買ってもいいんだな」と脅すようにぽかぽかに向かって言う。「そ、そりゃ、いいけど……。でもあんまり買わないで下さいよ。店に本が無くなっちゃうから」と、古本屋のオヤジにあるまじき発言をするぽかぽかである。
 世の中で何が好きかと言って、俺は開店前の古本屋ほど好きな場所はない。アルプスの万年処女雪や人跡未踏の秘密の漁場といった趣もあるのが、開店前の古本屋なのだ。うまくすればいわゆる「入れ喰い」という奴である。しかし訊けば、店のオープン前にも関わらず俺より早く店に図々しく入り込み、本を買って帰った屍肉を喰らうハイエナのような輩がすでに何人かいたらしい。ルールを知らないその手の非常識な連中は、小父さん、大嫌いだぞ。
 専門店にはしたくない、あくまでも街の古本屋を目指すと言っていたぽかぽかなので、正直、店に並べられている古本に期待はしていなかったのだが、それでも店にある本のほぼ三分の一はミステリ・SF関係か。結構、変テコリンな本も多い。結局は、家に転がっていた手持ちのダブり本で棚を埋めるしかなかったというわけというわけである。それ故、売り値も前の店が付けたまま……という本も多い。つまり仕入れ単価=売値ということになるのだが、たぶんぽかぽかの頭の中には「利益率」だとか「粗利」だとか「損益分岐点」だとかいう単語は未だカケラも無いのであろう。
 とまれ、このところまるで古本を買っていなかったので、開店祝いの気持ちも込めて買いまくることに決めた。
 かくして、その日に買った本。

 ロバート・フィルベル「メル・ブルックス 新サイコ」(サンリオ、、1,000円)
 マーティン・ケイデン「月は誰のもの」(早川ノヴェルズ、S44、200円)
 ニール・サイモン「名探偵再登場」(三笠書房、1978、500円)
 フレデリック・ダール「絶体絶命」(三笠書房、1958、2,000円)
 渡部直己「HELLO GOOD-BYE 筒井康隆」(彌生書房、1984、700円)
 深町眞理子「翻訳者の仕事部屋」(飛鳥新社、1999、800円)
 若島正「乱視読者の冒険」(自由国民社、1993、900円)
 児玉数夫「名探偵銀幕登場」(時事通信社、S54、1,200円)
 P・G・ウッドハウス「ウッドハウス短編集」(富士書房、1966、2,000円)
 ジェイムズ・サーバー「ジェイムズ・サーバー傑作選Ⅱ」(創土社、1978、800円)
 飛鳥高「崖下の道」(東都書房、S36、3,000円)
 フレデリック・ダール「ピンチ」(三笠書房、1959、2,000円) 
 ミッシェル・ルブラン「殺人四重奏」(創元推理文庫、1961、400円)
 
 ご覧の通り、ちょっと変な本が多い。値段も比較的安いのではないか。この中でほぼ間違いのないダブり本は「月は誰のもの」「絶体絶命」「ジェイムズ・サーバー傑作選Ⅱ」「殺人四重奏」だな。ま、「殺人四重奏」は初版白帯なのでダブりでも仕方ないが。「名探偵再登場」「HELLO GOOD-BYE 筒井康隆」「乱視読者の冒険」「ウッドハウス短編集」の四冊はひたすら持っていないことを願うばかりだ。逆に嬉しいのは「新サイコ」と「ピンチ」の二冊。どちらも長く捜していた本である。飛鳥高「崖下の道」も相場よりはかなり安いはず。

 これだけ買っていざ支払う段になって万札を放り投げると、開店前なので生憎釣り銭がないとの返事。こういう場合、普通の商売人ならば「開店記念なんで、今日はこれだけオマケして……」と来るはずなのだが、そこは今まで客商売などしたことのないぽかぽかのこと、虚空を睨みながら「あと千円分、本を買ってくれさえすればお釣りがあるんだけど……」と口の中で繰り返す呟くばかりである。仕方ないので、川瀬広保という人の書いた「SFエッセイ」(近代文藝社、1995)を買うことにした。川瀬広保とは聞いたこともない人だが、どうやら東海地方のSFファンダムの人らしい。
 支払いを終えると「しかしまぁ、たくさん買ったもんだなぁ」と、他人事のように言うぽかぽか。そうだろそうだろ、この店でこれほど一度に古本を買う人物はたぶん空前にして絶後だろうよ。

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May 10, 2006

GWの古本市で

▼ということで、トニー・チャーの「トム・ヤム・クン」を観てきた。世の中に数多あるアクション映画の中でもちょっと格が違う出来。トニー・チャーってホント、凄えよなぁ。今回のトニー・チャーは関節技が中心で、「マッハ!!!!!!!!」の時の打撃系アクションと較べて見た目は地味だが、やられる方はやはり確実に痛そうなんである。中でも何てったって凄いのは「49人連続関節極め」だね。こりゃ木戸銭払ってでも一見の価値ありですぜ、旦那。並のアクションスターとはやることが違うと、ちょっと感動してしまった。でも、相手となるチャイニーズ・マフィアたちもわざわざ一人ずつ掛かっていかないで、さっさと拳銃撃てばいいのにね(笑)。トニー・チャーの次作はどうやら「マッハ!!!!!!!!」の続編となるらしいので、これはもう今から大期待である。
 それにしても、俺は初日土曜の夜9時という結構な時間帯の回で観たのだが、観客はわずかに13名(そのうち男は11名)。世の中の格闘技映画ファンってこの程度しかいないものなのか?

▼劇場ではもう一本。「Vフォー・ヴェンデッタ」だ。舞台は近未来のイギリス。「1984」的な世界であるが、欧米人たちは何故かこの手のディストピアものが大好きなのが不思議でしょうがない。主人公のVを演じるのは“エージェント・スミス”ことヒューゴ・ウィービング。しかし役柄上、常に仮面をかぶっているので、主役でありながらスクリーンに素顔が出ることは一切無い。俳優にしてみれば何だかやり甲斐の無い役だが、「透明人間」のクロード・レインズみたいなもんと思えばよいのか。ラスト近くで仮面をかぶったVがウジャウジャと群れをなして出てくるが、「マトリックス」で増殖するエージェント・スミスを連想してしまった。映画としては決して詰まらなくはないが、積極的に「面白かった!」とはちょっと言い難い映画でありました。

▼GW中の古本市に赴く。俺が古書市会場に到着するや否や、待ちかねたように声を掛けてきたのは名古屋メンバーのぽかぽかだ。ぽかぽかは「古本屋探訪日記」なるサイトを開いているうちに木乃伊取りの故事よろしくその気になってしまったのか、せっかくの安定した仕事に見切りを付けてこの春にいきなり脱サラしてしまって、現在は古本屋の開業準備中なのである。「古本屋冬の時代」といわれる昨今に、ある意味チャレンジャーであることは認めるが、まったく俺には近頃の中年男の考えていることはさっぱり分からんわい。
 その古書市で買ったのは一冊だけ。桑原稲敏「往生際の達人」(新潮社、1998、300円)。戸板康二の「ちょっといい話」や永六輔の「その世界」三部作と同系統の芸人逸話集だが、前掲書と異なるのは芸人の死に特化した内容となっている点。ちなみに本書に収められている逸話を一つだけ紹介する。

講釈師の神田好山は酔っ払って街の占い師に手相を診てもらった。占い師が冗談に「あと三年の命です」といったところ翌日、自ら命を絶っている。その遺書にはこう書いてあった。

「ざまあみろ、てめぇの占いは当たらねぇ」

 古書市会場を出て、ぽかぽかと男二人連れで近所のファミレスへと向かう。
「で、どうすんだよぉ、古本屋は?」とランチを食いながら訊いてみた。「店のオープンはいったいいつ頃になりそうなんだ?」
「七月頃には何とか開店にこぎ着けたいと思ってるんだけど、なかなか捗らないんだよねぇ」とぽかぽか。
「準備、大変そうだもんな。で、どこまで進んだの?」
「とりあえず店の場所を決めて、警察に古物商の届け出を出して、本棚を発注した」
「ふむふむ(・・・こりゃあ、まだまだ時間が掛かりそうだな)」
「あっ、店の名前も決めたよ。わかば書店っていうんだ」
 「結婚は人生のわかばなり」「わかばの鬼太郎」・・・・といった店の行く末を暗示するような不吉なシャレが頭に浮かぶが、俺も大人だ、とりあえずは黙っておいた。「なるほど、意外なほど着々と進んでるようだね。じゃあ、本を棚に収めるのもこれからの仕事なんだ」
「そうそう。本の値付けもまだ一冊たりともしてないよ」
「だったらいっそのこと、『この棚の本はALL百円均一』『こちらの棚は全品三冊二百円均一』みたいにすれば値付けの手間は要らないよ」
「あはははは、それって実にいい考えだなぁ」と、あくまでも脳天気なぽかぽかである。
 これは単なる俺の予感だが、ひょっとすると店のオープンはこの七月には間に合わないんではなかろうか。いや、単なる予感なんだが。

 店の場所を訊くと、何とまぁ俺の勤務先のすぐ近くである。まるでこの俺一人をターゲットとして古本屋を開くようなもんだ。その他にも開業予定の古本屋について色々と尋ねてみるが、ぽかぽかから返ってくるのはやる気があるのやら無いのやらよく分からないような生返答ばかり。繰り返すが、近頃の中年男の考えていることは俺にはさっぱり分からんのである。

 つーか、こいつ、ひょっとすると何にも考えてないんでは……?

 ともあれ古本屋の開店までには何とかこぎ着けて欲しいと切に願う。開店して俺が2冊でも3冊でも欲しい本を抜いた後ならば、その時は潰れようが夜逃げしようが好きにしてもらっても一向にかまわないのだが。

▼それ以外に買っていた古本はこんなところ。

 アマンダ・クロス「殺人の詩学」(三省堂、1996、100円)
 ジャック・マール=セネカル「『風とともに去りぬ』殺人事件」(集英社、1983、100円)
 ポール・ギャリコ「ゴールデン・ピープル」(王国社、1987、100円)
 ディヴィッド・キャラハン「星条旗への謀叛」(早川書房、1997、1,000円)

 アマンダ・クロスは百円で見かけると何となく買ってしまうなぁ。この「殺人の詩学」はどう考えてみてもダブリだ。次の「『風とともに去りぬ』殺人事件」もダブリ本だが、同著者の「『そして誰もいなくなった』殺人事件」と較べると、古本屋で見かける確率はこちらの方が少ないんじゃないの? ギャリコの「ゴールデン・ピープル」 は小説ではなく、ギャリコのもう一つの本業であるところのスポーツ・エッセー集。ベーブ・ルースやボブ・ジョーンズ、ジャック・デンプシー、タイ・カップ、プリモ・カルネラといったアメリカ・スポーツ界の巨人たちについて書かれた好エッセー集である。

▼GW中に観ていたDVDのタイトルを順不同で挙げるとすると、こんなところだ。
 スクール・オブ・ロック楽屋の王様ブレイド3下妻物語バトル7クリミナルダイナマイト関西……etc.
「etc.」と書いたのは、あえてブログで公にしたくないDVDを観ていたわけでは決してなく、これ以外は単に忘れてしまったからである。はっはっは、つい数日前のことなのに、きれいさっぱり忘れてしもうたわ。
「スクール・オブ・ロック」はジャック・ブラックの独演会。ジャック・ブラックというと、俺は「ギャラクシー・クエスト」の善良な宇宙人サーミアンの一人を演じていたと今の今まで思いこんでいたのだが、これって違うんだよね。よく似てるんだがなぁ。ジャック・ブラックには今度はぜひ、手塚治虫キャラを演じさせたいなぁ。題して「ジャック・ブラックのブラックジャック」。どうよ? 芸能生活40周年を記念して博品館劇場で行われたワンマン公演を収録したのが小松政夫の「楽屋の王様」。意外に面白くない。どうせなら伊東四朗との二人芝居をDVD化してもらった方がよかったなぁ。「ブレイド3」は過去二作に較べると格段に落ちる。このシリーズは「2」→「1」→「3」の順で出来が良い。世評にたがわぬ面白さが「下妻物語」。「映画秘宝」にまんまと騙された「バトル7」。インディーズっぽい出来の「クリミナル」は、詐欺師映画。巻頭、いきなり電話を使った「オレオレ詐欺」が出てきて失笑してしまう。「オレオレ詐欺」のルーツはもしかしてアメリカなのかな? ごちゃごちゃ言わんと、誰が一番おもしろいんか決めたらええんや!……と銘打たれた大喜利大会の「ダイナマイト関西」。2003年の決勝戦を収録したこのDVDを観ていると、わずか3年前に収録されたものなのに時代の趨勢を感じてしまう。木村祐二、板尾創路、千原兄弟のジュニアなどの中堅どころに加えて、次長課長の河本、ザ・プラン9、たむらけんじ(チャ~)に関東から招いたおぎやはぎの小木、ドランクドラゴンの塚地といった現在のTVの深夜お笑い枠を支える芸人たちが出場メンバーで、ナレーターを今をときめくレイザーラモンがやっているという、ある意味、無駄に豪華なメンバー。未だに全国的に名前が通っていないのは、主催者のバッファロー吾郎の二人とケンドーコバヤシくらいのものか。これ、勝敗の判定をもう少し厳密にやる方法は無いのかなぁ。

▼新刊。
 新堂冬樹「毒蟲 vs.溝鼠」(徳間書店)
 爆笑問題「爆笑問題の風説のルール」(集英社)
 ジョイ「ダラー・ビル」(青山出版社)
 久山秀子「久山秀子探偵小説選 Ⅲ」(論創ミステリ叢書) 
 クレイグ・ライス「ママ、死体を発見す」(論創海外ミステリ)
 ヴェラ・キャスパリ「エヴィー」(論創海外ミステリ)
 首藤瓜於「刑事の墓場」(講談社)
 ジョナサン・キャロル「蜂の巣にキス」(創元推理文庫)
 筒井康隆「壊れかた指南」(文藝春秋)
 西原理恵子「毎日かあさん 3」(毎日新聞社)
 マーシア・ランディ「モンティ・パイソン研究入門」(白夜書房)
 リチャード・ベン・サピア「キリストの遺骸 (上・下)」(扶桑社文庫)
 芦原伸「西部劇を読む事典」(日本放送出版協会 生活人新書)

 日々、続々と目新しい本やそれまで見たこともない本の出る新刊の世界。いやなに、新刊だから当たり前のことなんだが。それだけ多くの本が世に出てなおかつ買っていると、買った新刊について一冊ずつ、この「未読王購書日記memo」で触れる機会がなかなか訪れない。しかし、俺も決してアホではない。「♪チチンプイプイ、ドレニシヨウカナ」でその日、買う本を選んでいるわけではないのだ。傍目にはめったやたらと買いまくっているように見えたとしても、一冊ずつ、俺なりの購入動機はあるのである。それがたとえ余人には決して理解し難いような理由であろうとも、自分なりには納得した上で買っているのである。これまでは買った新刊について、単にブログの脇で書影とともにタイトルのみを紹介していただけだったが、先日から「余は如何なる理由にてこの書物を購ゐし乎」と題して一冊ずつ購入動機も記すことにしてみた。大方、しばらくすると理由を思いつくことが面倒くさくなって、「この(著者の/シリーズの/出版社の/国で出た)本は今まで全部買っているから」だとか「本屋に入っても、他に何も買いたい本がなかったから」だとか「本屋でたまたま手に触れてしまったから」といった理由が続くことになるかも知れないが、その時はその時だ。とりあえずは行き詰まるまで続けるつもりである。

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April 22, 2006

ほとんど映画の話ばっかし

▼スティーヴン・キングの大傑作ホラー小説「呪われた村」が再映画化(「死霊伝説 セーラムズ・ロット」)されていたことを今頃になってようやく知る。最初の映画化の際の監督はご存知トビー・フーパーだ。「呪われた村」を最初に映像化したトビー・フーパー版はもともとTVムーヴィーとして製作されたのだが、出来映えのあまりの恐ろしさにほぼ半分の時間に無理矢理短縮されて劇場公開版としてようやく陽の目を見たという曰く付きのシロモノ。二度目の映像化となる今回は果たしてどうか。出演者もロブ・ロウ、ドナルド・サザーランド、ジェイムズ・クロムウェルにルトガー・ハウアーとそれなりに豪華だ。それに今度もTVムーヴィーとして作られているのも印象が良い。スティーヴン・キング原作の映像化作品では劇場公開版はほとんど駄作が占めており、TVムーヴィー版にこそ傑作が揃っているというのが識者(←何を隠そうこの俺のことなんだが)の見方なのである。実際、キングの原作をたかだか2時間程度の映画枠に収めることなど人間業ではないのである。私見ではS・キングの映像化作品ベスト3は「ザ・スタンド」「ストーム・オブ・ザ・センチュリー」「TVムーヴィー版 シャイニング」の三本で、この三本は全て劇場公開版ではない。

 で、この「死霊伝説」は如何なものか。結論を言えば、残念ながらキング映像化作品ベスト3を書き換えるまでには至らなかった。ストーリーは面白いんだけど(なんたって、原作の「呪われた村」は俺にとってキングのベスト長編だ)肝心の「怖さ」の点で少々物足らない。いや、いい線はいってるんだけどね。

 「死霊伝説―セーラムズ・ロット」以外にはレンタルDVDでさまよう魂たちカンフー麻雀ダニー・ザ・ドッグといったところを借りてきて観た。「さまよう魂たち」はピーター・ジャクソンがハリウッドに招かれて撮った最初の映画。ハリウッド初監督作品ということもあって概ね真面目に撮ってはいるのだが、ゲロやら死体破壊やら頭部爆発といったピーター・ジャクソンのグロテスク趣味がところどころに顔を出すのが何とも微笑ましい。この映画のすぐ後で「ロード・オブ・ザ・リング」の監督に大抜擢されるんだから、ハリウッドにも眼のある奴はまだまだいるってわけだ。「カンフー麻雀」は「カンフーハッスル」で世界最強の大家夫婦を演じたユン・ワー&ユン・チウの二人が主演した香港コメディ。申し訳ないが今まで香港コメディを面白いと思ったことのないこの俺が観たのがそもそも間違いだった。噂ではすでにこの映画の続編まで作られているそうで、さすがに香港、やることが何とも素早いぜ。ロードショーで見逃した「ダニー・ザ・ドッグ」はレンタル落ちを待ってて正解だったかなぁ。さすがにジェット・リー、アクション場面の動きは相変わらずすごいものがあるが、如何せんこのフィルムではドラマ部分が長すぎた。脇に廻ったモーガン・フリーマンやボブ・ホスキンスもちょっと困ったのではないか?

▼ロードショーで観たのは「プロデューサーズ」。ミュージカルに生まれ変わってブロードウェイで大ヒットしたメル・ブルックス原作の舞台版の映画化である。ブロードウェイのオリジナル・キャストである二人(ネイサン・レインとマシュー・ブロデリック)も良いが、オカマの演出家とその恋人役のゲイリー・ビーチとロジャー・バートの二人が何といっても儲け役。ウィル・ハレルのナチス信奉劇作家も妙にハマリ役だなぁ。失礼ながらこんなに面白いウィル・ハレルは初めて見た。ウィル・ハレルと同様にSNLの同窓組としてジョン・ラビッツも出演しているのもご愛敬。それにしても「プロデューサーズ」が映画化されるんならば、ひょっとしてモンティ・パイソンのブロードウェイ版「Spamalot」も映画化されないもんだろか?
 俺にとってメル・ブルックスの映画は「ヤング・フランケンシュタイン」が最高かつオンリーワンなだけに、「やはりメル・ブルックスが出演しないメル・ブルックス映画は良いわい」と思いながら観ていたのだが、エンドロールの最後の最後で画面にメル本人が登場してきやがった。ちぇっ(笑)。

▼行きつけのレンタルビデオ屋が中古ビデオの放出セールをやっていたので、目に留まったものを何本か買う。一本百二十円也。買ったのは第三の標的(1979)、マッド・ドッグス(1998)、サンシャイン・ボーイズ/すてきな相棒(1995)、アルジャーノンに花束を(1968)の四本である。「第三の標的」の原作はロス・マクドナルドの「三つの道」。リュウ・アーチャーが登場するのはこの次に書かれた長編の「動く標的」からである。「マッド・ドッグス」は出演陣がリチャード・ドレイファス、ジェフ・ゴールドブラム、ガブリエル・バーン、エレン・バーキン、ダイアン・レイン、カイル・マクラクラン、グレゴリー・ハインズ、バート・レイノルズ、ラリー・ビショップ、ポール・アンカ、ヘンリー・シルヴァ、リチャード・プライアー、マイケル・J・ポラード、ビリー・アイドルと、こうして書き写すのが嫌になるほど無茶苦茶ゴージャスなメンバーによる犯罪映画。それぞれの役者に見せ場がある点も立派である。「サンシャイン・ボーイズ/すてきな相棒」は75年にニール・サイモン原作脚本でウォルター・マッソーがアカデミー主演男優賞にノミネートされた「サンシャイン・ボーイズ」のTV用リメイク。TV用だからと言っても馬鹿には出来ない。こちらの主演はウディ・アレンとピーター・フォークで、ある意味オリジナル版よりも贅沢な配役である。「アルジャーノンに花束を」は映画ファン向けには「まごころを君に」と言った方が通りが良かろう。この4本、まとめてたったの480円ってのはまるで嘘のような値段だ。
 もう一本、BOOK-OFFの中古ビデオで「破壊!」(1974)。エリオット・グールドとロバート・ブレイクのバディ刑事ものだが、監督が先日観たばかりのピーター・ハイアムズ。劇場公開時以来、いったい何年ぶりに観ることになるんだろう。こちらは三百円也。一本百二十円に較べたら、やけに高い買い物をしてしまった(笑)。

▼新刊。
 山本禾太郎「山本禾太郎探偵小説選 1」(論創ミステリ叢書)
 吉田戦車「戦車映画」(小学館)
 いしいひさいち「バイトくん 5 アパートの鍵壊れてます」(双葉文庫)
 桂枝雀「桂枝雀爆笑コレクション 5 バことに面目ない 」(ちくま文庫)
 快楽亭ブラック「快楽亭ブラックの放送禁止落語大全」(洋泉社)
 レックス・スタウト「手袋の中の手」(早川ポケミス)
 藤田知浩 編「外地探偵小説集 上海篇」(せらび書房)
 宮風耕治「ロシア・ファンタスチカ〈SF〉の旅」(東洋書店)
 樽見博「古本通 市場・探索・蔵書の魅力」(平凡社新書)
 紀田順一郎「戦後創成期ミステリ日記」(松籟社)
 泡坂妻夫「春のとなり」(南雲堂)
 立川談志「談志絶唱昭和の歌謡曲(うた)」(大和書房)
 目黒考二「新・中年授業」(本の雑誌社)
 本の雑誌編集部編「本屋大賞 2006」(本の雑誌社)
 イアン・ランキン「影と陰」(早川HM文庫)
 マイケル・スワンウィック「グリュフォンの卵」(早川SF文庫)

 今でこそ推理小説に関してほとんど書くことのなくなった紀田順一郎なのだが、昭和30年代には大学ミステリ研究会の皓歯たる慶応大学推理小説同好会や今も本格の鬼たちの集うSRの会の最初期のメンバーであったとともに、往時はそれぞれの機関誌で内外のミステリについて熱く精力的に語っていた時代もあった。「戦後創成期ミステリ日記」はその頃にミステリ(本書内では、今でこそまず耳にすることのなくなった「推小」という略語がよく使われているのも懐かしいが)について書かれた著者二十歳代の文章--ミステリ時評やミステリ論--をまとめたものとして非常に貴重である。
 今、読んでみて驚くのは、たとえば「ナイン・テイラーズ」や「長いお別れ」といったベストテンクラスの名作を「冗長!」の一言で切って捨てている点。「若気の至り」かどうかは知らないが、こりゃあなかなか言えない一言だぜ。清張哲也彬光の三人を「推小界の三悪」と断定している点もすごい。現在の「常識」からいえば、この三人--特に鮎川哲也までをも--「三悪」と呼ぶのはちょっと理解しがたい見方ではある。これが当時の推理小説マニアの中のごく一部の特殊な意見だと思えなくもないが、(それがたとえごく一部にせよ)過去にはこうした見方もあったことは記憶に留めておくべきだろう。本書の約半分の頁を占める「To Buy or Not to Buy」に倣えば、この「戦後創成期ミステリ日記」もMust Buy! の一冊。
 本屋大賞も三回目にして既に「権威」と化してしまったようだが、このたびの「東京タワー」の受賞にはいろいろと思うことのある方々も多いのではないか? 驚くべきは直木賞、推協賞W受賞の「容疑者X・・・」にまで何票か審査員の票が入っていたこと。審査員の書店の皆さ~ん、気を確かに持ってくれよぉ! 本屋大賞はそういう趣旨の賞ではないでしょうに。

▼買った古本は、店買いで中島河太郎編「悪の美学」(サンケイ出版、S48、100円)、目録買いで平石滋「筒井康隆大事典 全書籍作品目録」(自費出版、1979、2,500円)と僅かに二冊だけ。「筒井康隆大事典」は1991年に出た改訂版の『筒井康隆大事典 ふたたびPART1』の方は持っているのだが、先に出たこちらの方は持っていなかった。ま、改訂版を持っていればそれで充分事足りるのだが、マニアとしてはそうもいくまい。オマケの付録もちゃんと揃っていてちょっと嬉しい。

▼さぁ、いよいよ待ちに待った「トム・ヤム・クン」の公開だぁ。

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March 31, 2006

女私立探偵調査報告補遺

2002年2月26日の「未読王購書日記」で佐藤みどりという著者の「情事の部屋」という本を買った俺はこんなことを記している。

最後の佐藤みどり『情事の部屋』はタイトルに惹かれて買いました。・・・って、違うわいっ! 副題に「若き女探偵の尾行記」とあるようにこれは実録ものである。著者写真を見る限り、佐藤みどりはなかなかの美人。女私立探偵というもの珍しさとその美形が幸いしたものか、当時の探偵作家クラブにも入会を許されている。しかもこの本には乱歩と高太郎の両巨頭の跋文入りだ。いやもう、ちょっと相手が若い娘だと耳にしたら、みんな揃って鼻の下をのばしちゃって、このこの~。

 この時には、探偵作家クラブに入会している本物の女私立探偵という物珍しさと乱歩と高太郎という当時の探偵文壇の両巨頭の推薦文が付いている点、それに加えてタイトルの艶っぽさに惹かれた若干のスケベ心を動機としてほとんど偶然にこの本を手に取っただけで、著者の佐藤みどりという人物に関しては何一つとして知識がなかった。

 それから時を経て昨年、乱歩関連のサイトとしてはおそらく国内最高峰である「名張人外境」を主催される人外境主人さんが自らの日記の中で、たまたま俺の書いた戯文も引き合いに出されながら、この佐藤みどりなる人物は先の衆院選挙で小泉チルドレンの一人で岐阜に刺客として送り込まれ野田聖子元郵政大臣と熾烈な選挙戦を演じた佐藤ゆかり現衆議院議員の実の母親だぁっ!……と意外な研究成果を発表されている。母は探偵、娘は刺客。……う~む、考えてみりゃものすごい一家だよ、こりゃ。
 人外境主人氏のその後の調べによれば、佐藤みどりは菊池寛の個人秘書を務めたこともある才媛で、「情事の部屋」以外にも「女の眼」という著書があり、そちらの本の帯にもちゃんと乱歩の推薦文が付けられているという。う~ん、一冊だけならまだしも二冊も推薦文を寄せるとは、美人女探偵を前にしていったいどこまで伸びてたんやろか、乱歩の鼻の下は? 人外境主人氏は「ここまで来ると、いっそ日本でただひとりの佐藤みどり研究家になってやろうかと思わないでもありません」とまで書かれている。

 ……そうはさせてなるものかぁ!

 人外境主人氏には何の恨みもないが、この俺はオリンピックの短距離走で世界新記録が出た時や芸能人の幸せそうな婚約記者会見を目にしたりすると、必ずと言っていいほど「そうはさせてなるものかあっ!」と思う奴なのである。レストランでは自分が注文した料理よりも人が注文した料理の方が美味そうに見えてしまい、目の前に鏡があると「世界で一番美しいのはだ~れ?」と鏡に向かって必ず尋ねてしまうタイプなのだ。故に「日本でただひとり」などと書かれると、意地でもそれを阻止したくなるのである。
 しかし「我こそが日本一の佐藤みどり蒐集家である」と名乗るためには、まだまだ乗り越えなくてはならない壁がある。だってまだ佐藤みどりのもう一冊の著書である「女の眼」ですら持っていなかったからだ。それに引き替え人外境主人氏は「情事の部屋」と「女の眼」の二冊をすでに手中にしているようなのだ。俺としてはひたすら歯噛みして耐える術しかなかったのである。
 しかしたった今、過去形で書いたことからも推察戴けるかと思うが、過日、ようやくその「女の眼」を入手した。捲土重来。これでようやく人外境主人氏と同一ライン上にたどり着いたというわけなのである。これでもう、人外境主人氏一人に佐藤みどりちゃんを独占させるようなことはないはずだ。何だか俺と人外境氏は佐藤みどりちゃんを間に挟んだ三角関係の様相を呈してきたかのようである。冷静に考えてみれば、佐藤みどりって大正九年生まれなんだけどなー。
 しかしそれでもまだ俺の方が一歩出遅れているのである。何故なら今回俺が入手した「女の眼」には、肝心カナメの乱歩の推薦の言葉の載った帯が欠けていたからなのだ。ちぇっ。まぁ、もういい加減面倒くさくなってきたから、佐藤みどりちゃんは潔く人外境主人氏に譲ることにして、俺は娘の方で我慢するとすっかぁ(注1)。

▼というわけで、買った古本は佐藤みどり「女の眼」(講談社ミリオンブックス、S31、800円)、石川喬司「エーゲ海の殺人」(旺文社文庫、1986、300円)、常磐新平「アメリカンベストセラーズ101」(旺文社文庫、1986、300円)、福島正実「月世界2008年」(旺文社文庫、1985、300円)の4冊。佐藤みどり以外の3冊は全て旺文社文庫だが他意はない。とりあえずこの三冊の旺文社文庫の中で、持っていないのは「アメリカンベストセラーズ101」だけのはずだ。

▼新刊。
 リチャード・エイリアス「愛しき女は死せり」(早川HM文庫)
 デイヴィッド・マレル「トーテム[完全版] (上・下)」(創元推理文庫)
 中村融 編「地球の静止する日 SF映画原作傑作選」(創元SF文庫)
 伊坂幸太郎「終末のフール」(集英社)
 スティーヴン・キング「ダーク・タワーⅤ カーラの狼 〔上・中・下〕」(新潮文庫)
 夢枕獏 監修・執筆「夢枕獏全仕事 熱い幻想」(一迅社ビジュアルBOOKシリーズ)
 菊地秀行 監修・執筆「菊地秀行全仕事 夢幻世界の誘惑」(一迅社ビジュアルBOOKシリーズ)
 夢枕獏「獅子の門 雲竜編」(カッパノベルス)
 P.G.ウッドハウス「ウースター家の掟」(国書刊行会ウッドハウス・コレクション)
 吉田戦車「殴るぞ(9)」(小学館)
 「ミステリマガジン 2006/5月号」(早川書房)
 「SFマガジン 2006/5月号」(早川書房)
 「本の雑誌 2006/4月号」(本の雑誌社)

 この新刊の中からいったいどれを最初に読もうとするか。大方の人は伊坂幸太郎の「終末のフール」をまず選ぶのではなかろうか。俺の場合は夢枕獏の「獅子の門 雲竜編」だなぁ。決して速読ではない俺でも一時間もあれば読み終えられる点がVERY GOOD! しかし問題が一点。前作までのストーリーをまるで憶えちゃいないのよ。タイミング良く「夢枕獏全仕事」というMOOKが出たのでそちらも購入して、読み始める前に今までの粗筋のおさらいでもしておくかと思ったのだが、夢枕獏の他のシリーズについては結構詳しく書かれているにも関わらずこの「獅子の門」シリーズは何故か十把一絡げ扱いで、結局、主人公が誰だったかすら記憶にないままに読み始めることとなる。でも、それでもちゃんと読めてしまうのは不思議だ。
 この次に手に取るのは伊坂かデヴッド・マレルの「トーテム[完全版]」かと悩むところだが、「トーテム」は上下本なので、やはりここは一気に読める「終末のフール」ということになるだろうか。さらりと目を通したところでは、伊坂幸太郎初のSF設定を使った、直裁的には「渚にて」を想起させるタイプの静かな終末SFのようだ。ここ数作、伊坂幸太郎の書くものはミステリからは離れていってしまっているようだが、いつかミステリの世界に戻ってくる日があるのかなぁ。・・・なぁんで言いながら、結局は吉田戦車の「殴るぞ」を先に読むわけなんだが。

 前回の日記で書き漏らしていた「本の雑誌」の最新号は蔵書家必読の本棚特集である。実際、家具メーカーは蔵書家の要望にもっとちゃんと応えられる本棚を造るべきではないのか。つーか、蔵書家の求めるような本棚を売り出したら売れるんじゃないの?
 俺の希望する理想の本棚の条件は

「軽量で丈夫」
「それでいて安定性が抜群」
「棚の位置の微妙な上下移動が自由」
「棚の数は最低でも八段。本棚の高さは2m程度」
「棚は、前後に二冊を重ねて置けるだけの幅を持ち」
「文庫ならば一つの本棚で少なくとも800~1000冊、単行本なら400~500冊を収納可能」
「本棚の色は白」

 といったあたりか。まとまった数になると本自体だけでも相当な重量になるために、見た目は立派ながっしりした木製の本棚なんてその自重だけでも床が保たなくなる。本棚は軽いスチール製で充分なのである。蔵書家にとっての最も無駄な空間は、本棚に本を納めた際に生じる棚と棚の間に空いた空間だ。これが少なければ少ないほど一つの本棚に納まる本の数は増えるはず。そのために棚の上下移動がミリ単位で調節可能な本棚が理想的である。もしもそれが出来ない場合には「文庫用」「新書版用」「四六版用」など収める本のサイズ毎に専用の本棚を造ってもらいたい。棚の数も五段とか六段ではいくら何でも少なすぎる。それと、本棚と天井の間にできた無駄な空間をいったいどうしてくれるんだ。本棚の高さは天井にほとんど届くほどあった方が良い。その方がもしも地震が来ても本棚が天井に引っかかって倒れないかもしれないし。よくある移動式棚の付いた本棚なんて愚の骨頂である。蔵書家の本棚は遅かれ早かれどうせ棚の前後ろに二段重ねで本を積まれていく運命にあるのだ。ならば、最初からそれだけの幅を棚にはもたせておいて欲しい。「本棚の色は白」はあくまでも個人的な要望になるのだが、我が家の壁は全てイタリアはトスカーナ州カララ産の総大理石造りなので、できればその色に合わせるために。

▼観たビデオはスティーヴン・セガールの「沈黙の聖戦」、トッド・ブラウニングの「フリークス デジタル・リマスター版」、「トリプルX ネクスト・レベル」といったあたり。
 ユエン・ウーピンを監督に迎えた「沈黙の聖戦」は、武装組織に娘を誘拐された元CIAのセガールがタイの街で大暴れする一作だが、肝心のアクション場面では吹き替えを使っているのがモロバレ。ちょっとがっかりだなぁ。
 トッド・ブラウニングの「フリークス」は、デジタル・リマスター版になったということで観直してみた。この「フリークス」、もう四半世紀も前に新宿の薄暗い自主上映会で観たのが初見なので、その時には画面も薄暗く画質も最悪で何が何やらはっきりしなかったのである。今回、改めて観てみた印象は以前とさして変わっていない。要はこの映画、「世界びっくり人間大集合」をやりたかっただけなのではないか。そういう意味で「ホラー映画の隠れた名作」だとか「おぞましい恐怖の傑作」というような評価は如何なものか。だって、映画自体はたいして怖くないもんな。愛川欽也がMCで出演していないのが不思議なくらいのもんだ。
 密かにヴィン・ディーゼルの代表シリーズになるのではないかと期待していた「トリプルX」なのだが、どんな事情があったのかは知らないがヴィン・ディーゼルが企画段階でいきなり主役を降板してしまった。ということで前作の主役だったヴィン・ディーゼルは映画の冒頭であっさりと死んだことにされてしまい(前作ではあんなにも無敵で不死身そうだったのにぃ~)、そこで「ニュー・トリプルX」として新たに刑務所からスカウトされてきたのがヴィン・ディーゼルよりもよっぽど弱そうなアイス・キューブなんだもんなぁ。いやはや、こんなシリーズの続き方も珍しい。今回の「ネクスト・レベル」では主役の交代に殉ずる形で監督以下のスタッフもほとんど総取っ替えしたらしく、メイキングを観ると脚本の出来映えから撮影現場での照明の当て方に至るまで前作を軽んじるような発言ばっかし(笑)。ま、アメリカ人らしい自己主張と言えばそれまでなのだが、シリーズ第一作に対するリスペクトがまるで足らないやね。映画自体は、前作に引き続いて出演のサミュエル・L・ジャクソンや俺のご贔屓役者のウィレム・デフォーが出ていることもあってそこそこには楽しめるんだけどね。

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March 25, 2006

このところ買っていたDVD

▼DVDも実に安くなったもんだ。というわけで近頃、何となく目に付いたDVDを買いまくっている。ネタもないので最近買ったDVDの題名でも挙げてみることにしよう。

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スウィート・チャリティ」(1969)。ご存知ボブ・フォッシー初監督作品。今までなかなか観る機会がなかったのだが、たまたま入ったDVD屋で半額セール対象品だったので即断即決で購入。もっとも後で調べたら、最近になって廉価版が出たために半額セール対象品になっていたようなのだが(注1)。
 
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 ボブ・フォッシーつながりで「マイ・シスター・アイリーン」(1955)。もっともこちらはボフ・フォッシーが監督しているわけではなく出演並びに振り付け担当なのだが。主演はジャネット・リーとジャック・レモン。二人ともミュージカル・スターとしての印象は少ないが、この「マイ・シスター・アイリーン」はジャック・レモンが「ミスタア・ロバーツ」でブレイクする直前の作品なのである。
 
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 続いて今度はジャック・レモンつながりで「ハッピー・ロブスター」(1959) 。共演はドリス・デイであり、ジャック・レモンとしてはこの作品の直後があの名作「お熱いのがお好き」への出演ということになる。
 

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 ブロードウェイでの大ヒットによって再映画化され、近々日本でも上映される運びとなった「プロデューサーズ」絡みで、メル・ブルックスの作品がどんどん廉価版落ちしている。その中からとりあえず「メル・ブルックスのサイレント・ムービー」(1976)と「メル・ブルックスの珍説世界史 PART1」(1981)を購入。どうせなら、このついでに「新サイコ」や更に言えば1968年版の「プロデューサーズ」も廉価版DVDで出して貰えれば俺としては非常に助かるのだが。もっと言えばこういう機会だからこそ日本未公開の「メル・ブルックスの命がけ!イス取り大合戦」をDVDで出せよな、今すぐにでも。それにしても俺がメル・ブルックスの作品でホントに面白いと思えたのは「ヤング・フランケンシュタイン」ただ一作しかないし、残念なことに「ヤング・フランケンシュタイン」にはメル・ブルックスは出演してないんだよなぁ。

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 500円DVDでジーン・ケリーの「雨に唄えば」(1953)、ダニー・ケイの「アンデルセン物語」(1952)とハワード・ホークス/ボカートの「三つ数えろ」(1946)。「雨に唄えば」は色川武大の「映画放浪記」を読んでいて何となく観返してみたくなったもの。ダニー・ケイはもともと好きなコメディアンだし、「三つ数えろ」は映画ファンならば必須アイテムの一つでしょう。それにしてもこういった作品が500円出せば買えるようになるとは、何と素敵な世の中になったことか。古本蒐めはそろそろ卒業してDVDコレクターにでもなってやろうかなぁ。
 
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 中古DVDでデ・バルマ/アル・パチーノの「スカーフェイス」(1983)。初公開当時は銃撃シーンの異様な迫力が喧伝されたが、今の目で観てみると意外にそうでもない。しかし変わっていないのは四文字卑語の多さ。さすがはオリバー・ストーンの脚本だ。確かにこれだけ卑語の頻出する映画ってのも少ないやね。アル・パチーノなんてこの映画の中で一生分ほど「FUCK!」と口にしたのではないか。そういやイチローもWBCの韓国戦では間違いなく「FUCK!」を連発していたが。
 
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ガイ・リッチーの「ロック・ストック&ツー・スモーキング・バレルズ」(1998)もようやく廉価版が出たので購入。過去にあれだけ、こりゃすげぇ!と騒いでいたのにも関わらず、今までDVDはおろかビデオ版ですら持っていなかったんだよな。いやぁ、黙っていてご免な。今回、改めて見直してみたが、才気煥発、若さ全開でやはり実に面白い。特に音楽のセンスがいいやね。ガイ・リッチーもマドンナと結婚なんかしなければ、まだまだ面白い映画を作っていたかもしれないのにな。(注2)
 
▼で、このところで観たレンタルDVDはジャッキー・チェンの「香港国際警察」とトラボルタの「ビー・クール」の二本。
 老いたりやジャッキー・チェン!……が「香港国際警察」を観た唯一の感想。これだけコミカルな要素のないジャッキー・チェン映画というのも珍しいのではないか? ジャッキー・チェンもさすがに齢五十を超えたともなれば今までのような脳天気な役柄ばかりというわけにはいかないことは判るのだが、ストーリー自体も何だかやけに暗いものでジャッキー・チェンにはまるで似合わないものだ。
 それに引き替え「ビー・クール」はなかなかに楽しい一作。エルモア・レナード本人がこの映画の製作にも携わっているんだよね。トラボルタ、ユマ・サーマン、ハーベイ・カイテル、ビンス・ボーン(うわ、「ドッジボール」を観たばっかりなのに!)、セドリック・ジ・エンターテイナー、ジェームズ・ウッズ、ダニー・デビートにWWEのザ・ロック……と出演者も多士済々で、あっそうだ、エアロスミスのスティーヴン・タイラーも重要な役回り(本人役)で出演しているんだ。スターの卵役を演じるクリスティーナ・ミリアンはかな~り可愛い。私ゃ一目でファンになりましたよ。恥ずかしながら第一作目の「ゲット・ショーティ」を観ていないので、これを機会に観るとすっかなぁ。おかま(!)の用心棒役を引き受けたザ・ロックがかなりの喉自慢だということもこの映画で初めて知った。それにしてもロック様はよくこんな役を引き受けたもんだよなぁ、儲け役だったけど。

▼劇場でリー・リンチェイの「SPILIT」を観た。落陽の感のあるジャッキー・チェンとは異なり、さすがにリー・リンチェイだ。動きにはまだまだ充分にキレがある。アクション・シーンではさすがに吹き替えも多かったようだが、大方の予想に反して中村獅童もよくやっているのではないか。ブルース・リー時代の「ただひたすら悪い日本人像」からは脱却していたが、でもあの顔はどこの国でも間違いなく悪人顔でしょうに。この映画を観た中国人の反日感情が果たしてどのように変わるのか、そこが知りたい。ヒロイン役のスン・リーは、俺の目には清楚なCカップの小池栄子という印象。いや、ホントにCカップかどうかまでは知らないが。

▼新刊。
 大森望「特盛!SF翻訳講座」(研究社)
 志ん朝一門「よってたかって古今亭志ん朝」(文藝春秋社)
 ナンシー関「ナンシー関の「小耳にはさもう」ファイナル・カット」(朝日新聞社)
 北村薫「紙魚家崩壊」(講談社)
 スチュアート・マクブライド「花崗岩の街」(早川ポケミス)
 ポール・ドハティ「白薔薇と鎖」(早川ポケミス)
 クリストファー・ムーア「アルアル島の大事件」(創元推理文庫)
 貸本マンガ史研究会 編・著「貸本マンガRETURNS」(ポプラ社)

 最近、大型書店を覗く機会がないためか、大森望「特盛!SF翻訳講座」は未だ書店で実物を一度も見ていない。この本は久しぶりにネット経由で注文した新刊だ。
 志ん朝一門の手になる「よってたかって古今亭志ん朝」は、弟子の立場から見た志ん朝像。意外にワガママで、ある意味可愛い志ん朝の日常がかいま見える。三遊協会独立騒動の際には憤った志ん朝が談志につかみ掛かったなぁんて、意外な「事実」もこの本で初めて知った。志ん朝去りて早4年半。未だにその空白を埋める噺家は現れない。
 ナンシー関の「ナンシー関の「小耳にはさもう」ファイナル・カット」は書店で今まで見落としていた一冊。今年の一月にすでに出てたんだよねぇ。週刊朝日に連載されていた「小耳にはさもう」シリーズの単行本未収録分の落ち穂拾いだが、その質は決して落ちてはいない。中にソルトレイク冬季五輪について触れた一項がある。そうかぁ、4年前にはナンシー関はこの世にいたんだ。あの頃はホントに良かったよなぁ、ナンシー関がまだ生きていたというそのことだけでも。

▼古本。
 林家源平「俺の三平」(海越出版社、1989、100円)
 松本清張編「海外推理傑作選5 優しく殺して」(集英社、1978、100円)
 松本清張編「海外推理傑作選6 犯罪機械」(集英社、1978、100円)
 ドナルド・M・ダグラス「レベッカの誘い」(講談社文庫、S54、150円)

 う~む、実につまんない本しか買ってないもんだ。このうち未所有の本は「俺の三平」だけしかない。ちぇっ。

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March 15, 2006

本を売った

▼と言ったって、俺の個人蔵書ではない。俺の大切な蔵書を誰が売るもんかい。売ったのは職場のレイアウトを変更するにあたって置き場所に困った会社の蔵書の一部である。廃品回収業者が来た時にでもゴミと一緒に引き取らせようと皆が言う中で、「だったら古本屋に売りに行った方がいい。そうすりゃ多少なりとも現金になるはずだから、その金は職場旅行の飲み物代の足しにでもしてはどうか」と提案したのはもちろんこの俺だ。そう口にした責任もあり、俺自らが古本屋に売りに行くことになった。
 本はほとんどが函付きの一見すれば高そうなものなのだが、ヤクザまがいの怪しげな団体に脅されて買った定価が一冊1万8千円もするような同和文献資料だとか、ワケの分からぬ業界団体の創設何十周年記念の饅頭本のようなクズ本ばかりが段ボールにおよそ二箱分ほど。こんな本、買う奴なんているもんかい。
 とはいえ、せめてまとめて2千円くらいでは引き取ってくれるのではないか……との目算で会社の近くの古本屋へと持ち込んでみた。店番の女性から、今日は主人が不在で値が付かないので後ほど連絡します……と言われたのが先週の金曜だ。そのことをすっかり忘れて週が明けた月曜になってその古本屋の店主から電話が入った。
「先日お預かりした本、ほとんどが店に置いても売れそうもない本ばかりなんですが、一冊だけ1,500円で引き取らせて戴きます。それでよろしいか?」
 やはりな。2千円にでもなれば……という俺の見立てはほぼピタリ賞だったわけだ。「えぇ、その値段で結構ですよ」と電話で告げて、昼休みに再び古本屋へと向かった。
 古本屋に着くと顔馴染みの店主が「おやおや、電話の相手は貴方でしたか。だったらもう何冊か引き取ってあげても良かったですな」と苦笑いしながら言う。「いえいえ、こんな本、店にあってもどうせ邪魔なだけでしょうから」と俺も苦笑しつつ返事を返す。「で、残りの本はどうします?」と訊く店の親爺に向けて「まぁ、適当に店で処分しといて下さい」と言おうとして、一瞬、待てよと思いとどまる。近くのBOOK-OFFにもしもこの段ボールをそのまま持ち込んでみたらいったいどうなるんだろう。俺は今までBOOK-OFFに本を一度も売ったことがない。BOOK-OFFに試しに本を売ってみるってのも貴重な人生経験の一つになるんではなかろうか。「じゃあ残りは持って帰ります。駄目モトでBOOK-OFFにでも売りに行ってみますわ。ははは」と笑うと、店の親爺も「さぁ、果たして引き取ってくれますですかな、ははは」と笑いを返した。
 で、向かった先は近くのBOOK-OFF。アルバイト店員に本の引き取りを頼んで店内で待つことしばし。「**様、本の査定が終わりましたぁ」という店内放送が響く。はてさて、如何ほどで引き取ってくれるものかと思いつつカウンターに向かうと、アルバイト店員の曰く……。

「え~、全部で2万5百円になりますが、これでよろしいでしょうか?」

 ……一瞬、何かの悪い冗談なのかと思いました。
 文句の一つもあるもんかい。良いに決まっているではないかっ。万札2枚と500円玉を受け取って逃げるようにしてその場を立ち去る。何一つ悪いことはしてないってのに。
 で、本を売ったその金は領収書があるわけでも無し。「わぁ、古本屋さんに持って行ったらこんなに沢山お金が貰えたよぉ!」と小躍りしながら会社に戻り、とりあえず2千円ほど入金したその足で残りの金を握りしめてマカオあたりに高飛びしても良かったのだが、その程度の金で俺の人生を棒に振ってどうする。古本屋とBOOK-OFFで現金化した全額を正直に会社に納めました。
 今回の件で唯一の着服行為といえば、それはBOOK-OFFのサービス券だなぁ。BOOK-OFFで買い物した際に購入金額500円毎に貰える50円分の割引サービス券。初めて知ったが、あのサービス券って買った時だけじゃなくてBOOK-OFFに本を売った時にも貰えるんだね。今回はおよそ2千円分のサービス券が貰えました。こんなものを会社に持って行ってもゴミと一緒に捨てられるだけなので、誰が考えても最も有意義にこのサービス券を使ってくれそうなこの私がお駄賃代わりに戴いておくことにしました。あぁ、確かにそういう意味では立派な着服だよ、業務上横領だよ。悪いか(-_-;)凸。

▼BOOK-OFFの引き取り本の査定方法は、店に持ち込まれた中古本の発行年度とその本の状態(注)によって定価の何%で引き取ればよいかが書かれた買取マニュアルがあります。よって本に関する知識がまったく無く漢字で自分の名前すら書けないようなアルバイト店員(←言い過ぎ)でも本の買い取りが可能になるわけです。どんなに古書的価値のある本でもBOOK-OFFに掛かれば、引き取り価格は全て定価の数%。明治大正に発行された稀覯本でも引き取り価格は定価の数%……ってことは銭単位か?
 逆に考えると、BOOK-OFFに売る目的で定価を30万円くらいに設定した本をでっち上げれば、いい値段で引き取ってくれる可能性もあるわけだ。資金繰りに困ったどこかの出版社の皆さん、このアイデアを買ってはもらえませんかぁ?

▼で、貰ったBOOK-OFFのサービス券を使って買ったのは、DVDの「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 スペシャル・エクステンデッド・エディション」。箱の状態があんまり良くないせいなのか、付けられた売値が4,400円ということなので、サービス券を有効活用して2千円で買えました。「指輪」三部作中、これで残るは「王の帰還」のみとなった。「王の帰還」のスペシャル・エクステンデッド・エディション版もたとえどんな汚い手を使っても必ず安く買ってみせるぜ。

▼店買いした古本は4冊。
 
 石ノ森章太郎「章説 トキワ荘・春」(風塵社、H8、700円)
 マーク・シッパー「ビートルズ奇想天外抱腹絶倒物語 え?」(新興楽譜出版社、1979、100円)
 赤塚不二夫「天才バカボン 別巻1」(曙出版、1974、300円)
 赤塚不二夫「天才バカボン 別巻2」(曙出版、1975、300円)

 「天才バカボン 別巻1~2」は、「天才バカボンのおやじ」という題名で「漫画サンデー」に連載されていたもの。つまり大人向けのバカボン外伝である。マンガの古本は滅多に買うこともないのだが、「天才バカボン」あたりの相場はいくら何でも一冊300円てことはあるまいて……と思って買ったものの、帰宅してからネットで調べてみるとやはり一冊1,500~2,000円くらいで取り引きされているケースが多いようだ。ちなみに70年代に赤塚不二夫の単行本を結構出していた曙出版は石ノ森の「章説 トキワ荘・春」によれば赤塚不二夫の初単行本「嵐をこえて」を出版した出版社。超売れっ子となった後でこうして恩を返していたわけで、赤塚不二夫のキャラに似合わずなかなかに義理堅いと言えよう。

 目録買いでは二冊。

 フランク・ケーン「弾痕」(久保書店Q-T BOOKS、S44、2,000円)
 ニック・カーター「キルマスター/アムステルダムの死」(久保書店Q-T BOOKS、S46、2,000円)

 おいおい。届いた本を見たらどちらも持ってるんじゃねぇの、もしかして?

▼レンタルDVDで、デンマークのラッセ・スパング・オルセン監督のゲット・ザ・マネー。ラッセ・スパング・オルセンといえば、そのあまりにオフ・ビートなストーリー展開と登場人物のキャラの鮮やかさ、そして観た誰しもが口をあんぐりと開けそうなラストまで、アクション映画のツボを押さえつつも良い意味で定型を外しまくった「ゼイ・イート・ドッグス」の監督であり、嬉しいことにこの「ゲット・ザ・マネー」はその「ゼイ・イート・ドッグス」の続編なのである。

 映画は前作の主役である暴れん坊のハロルド(キム・ボドゥニア)がム所から出所するところから始まる。
 ハロルドは仲間のコック2人の待つ自分の店に戻ったが、犯罪組織に昔の借金の返済を迫られ、死に瀕して入院中のハロルドの育ての親ムンクの見舞いに行けば、会った事がないという息子と最後に一目会いたいと頼まれてスウェーデンの重警備刑務所から息子を脱獄させることを計画。しかし肝心のその息子は、何と連続殺人鬼だったのだ!
 ……と、この先、話がどう転んでいくのか、これではさっぱり分からないでしょ? 銃撃戦やカーアクション、銀行強盗に現金強奪、更には飛行機の曲乗りと、映画の中では実に簡単に人が死んでいくしハロルドも何のためらいもなく女を撃つ。無論、連続殺人鬼もどんどん人を殺すのだが、決して殺伐とした印象の残る映画ではないんだよなぁ。面白さでは「ゼイ・イート・ドッグス」の方が勝るが、これはこれで面白い。ガイ・リッチーの「ロック、ストック&ツー・スモーキング・バレルズ」のようなクライム・コメディの好きな人はぜひ一見を。

 他にレンタルDVDで、ベン・スティラーの「ドッジボール」も観る。スポーツコメディにはよくある「負け犬連中が頑張って天下を取る」以上の何者でもない映画。アメリカではそこそこヒットした映画なのだが、やはり知能程度のあんまり芳しくない観客を相手にする映画だよなぁ。俺にはベン・スティラーの面白さもよく分からんし。
 もう一本、「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロウ」も今頃になってから観た。「キング・コング」を観る前だったらまだ良かったんだけどね。

▼映画は、楽しみにしていた「イーオン・フラックス」。主演のシャーリーズ・セロンが無茶苦茶にキレイであり、純粋にそれだけを楽しむと割り切れば充分に鑑賞に堪え得る作品である。監督はカレン・クサマ。名前の通り、日系の女流監督であり、そう思って観れば和傘や日の丸などのジャパニーズ・グッズが画面のところどころで目についたなぁ。プロモーションでシャーリーズ・セロンは来日したのだが、このクサマ女史は何故だか来日してなかったんじゃないかな。残念ながらも、故郷に錦を飾る……と自分で思えるほどの出来映えではなかったというわけか。上映二日目にして観客の入りはせいぜい2割程度か。

▼新刊。

 上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」(エンターブレイン)
 唐沢俊一「奇人怪人偏愛記」(楽工社)
 久住昌之作・谷口ジロー画「散歩もの」(フリースタイル)
 ハーラン・コーベン「イノセント (上・下)」(ランダムハウス講談社文庫)
 桂枝雀「桂枝雀爆笑コレクション 4 万事気嫌よく 」(ちくま文庫)
 色川武大「映画放浪記」(キネマ旬報社)
 オースティン・フリーマン「証拠は眠る」(原書房)
 「本の雑誌 2006/4月号」(本の雑誌社)

 上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」はギャグマンガ集。ギャグマンガとして新し