June 04, 2006

病院の怪談(前編)(「黒呆け蜘蛛の会」より)

▼高齢の父親がベッドから落ちて腰椎を骨折してしまい、昨年の暮れ以来かれこれ半年の間、入院生活を続けている。入院当初は自分の身体を起こすことすらままならなかったのだが、療養の甲斐もありゆっくりであれば歩行も可能となってそろそろ退院も間近いということで病院に見舞いに行くと父が入院しているのは6人部屋。戦前に建てられたというその病院は、昔は結核専門のサナトリウムに近い病院だったとのことで、外観こそそれなりに新しくなってはいても、建家内に入るとどこか古めかしさが感じられ、消毒薬に混じってカビの臭いすら漂ってくるようだ。
 親父の寝ている6人部屋のうちの4つのベッドが入院患者で埋まっていて、残りの2つは空きベッドだ。父親は歳を重ねるごとに気難しさが増し寡黙になっていくが、他の患者たちは気が良さそうで話し好きのお年寄りばかり。父を除く三人の入院患者たちが自分のベッドで食事をしながら雑談しているのを端で聴くとも無しに聞いていると、それはこんな話だった。

「近頃、おかしなことがあるんだよなぁ」
「ふ~ん、何ですねそれは?」
「毎晩、夜中の2時頃--いわゆる丑三つ時ってやつだな--になると決まってフッと目が覚めるんだけど、気が付くとベッドの横に痩せた男が立っていて、ジッとこちらを見下ろしているんじゃよなぁ。特に何か話しかけてくるわけでもなし。あれはいったい何なんだろうなぁ」
「目的が分からないってのは何となく嫌だねぇ」
「へぇ・・・。それで?」
「こちらは眠いからそのままついウトウトしちゃって、気がつくと朝で、その男はもうそこにはいないんだけど」
「へぇ、何なんですかねぇ、そりゃあ。で、何かされるんですかね?」
「いや、黙ってこちらを見ているだけ。あれ、ホントに何なんだろうね?」
「う~ん、何なんでしょうねぇ。もしかして今夜もやって来るんでしょうかねぇ?」
「来るだろうね、おそらく。何せ毎晩、やって来るんだから」
「もしも今晩もその人が来たら、私に一声掛けて起こしてくださいよね。一度見てみたいから」
「そりゃあ、いいけど・・・。何なんだろうねぇ」
「何ですかねぇ」
「何だろうなぁ」

 ・・・そっ、そっ、それって……。

「というわけで・・・」と、ここまで一気に話してきた私はそこでひとまず話を区切って私を囲んで座っている黒呆け蜘蛛の会の面々を見回した。「黒呆け蜘蛛の会」とは、暇人たちが月に一度集まって食事を供にする会なのだが、その会に毎回ゲストを呼び、ゲストが今までの人生の中で出会った不思議な出来事の謎を解いてみようという、好事家たちの酔狂な会なのである。
「このままではどうも目覚めが悪いんです。そこで、物好きな・・・いえいえ、有名な皆さん方のお知恵を拝借して、 この謎をぜひ解いて戴きたいというわけで」
 私にそう言われて、テーブルを囲んで座っていた黒呆け蜘蛛の会の面々は互いに顔を見合わせた。
 
【後半(次回)へと続く】

▼後半へと続くまでのCMタイムを利用して、買った新刊の紹介。

ミステリー文学資料館 編「わが名はタフガイ (ハードボイルド傑作選)」(光文社文庫)
 選ばれた作品を見ると、日本のハードボイルド小説史を振り返るには最良の短編アンソロジーではなかろうか。樹も見ながら森も見たような池上冬樹氏の見事なあとがきに補完しなきゃならない作家や作品はちょっと思い浮かばないなぁ。
滝本誠「渋く、薄汚れ。 ノワール・ジャンルの快楽」(フィルムアート社)
 「ノワール」という単語は映画と小説の相互に行き来して使われることも多いが、この書は、そのどちらのジャンルにも興味のある人には必読本であるな。それにしてもこの俺は40~50年代に作られたノワール・フイルムをホント、観てないよなぁ。
伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」(祥伝社NON OVELS)
 相手が伊坂幸太郎だけに、「地球を回す」の映画化に便乗して出した続編とは言えないでしょう。このところミステリ離れをしていた伊坂幸太郎がこの小説では果たしてどう出るかが非常に興味深いところ。ちなみに「地球を回す」は伊坂作品の中では俺の評価は比較的低い部類なのだが。それとこの本、装丁が「地球を回す」とあまりにも似すぎているせいで、新刊が店頭に並んでいてもしばらく気が付かなかった。どうしてくれる?
スティーヴ・オルテン「邪神創世記 (上・下)」(文春文庫)
 スティーヴ・オルテンて、昔、別れたメグっていう女が太古の闇を裂いて海底深くから人類に襲いかかるっていう小説を書いた人だよな?(←全然違う) 前作の「蛇神降臨記」にせよ、本作にせよ、どちらにせよ変テコな小説を書く人のようなんだが。アメリカの半村良か?
ブリジット・オベール「神のはらわた」(早川HM文庫)
 「臓物小説」と聞けば、やっぱり買わずにはいられない。
エド・マクベイン「最後の旋律」(早川ポケミス)
 最後の87分署。「これでもうポケミスを買うことは二度とないな」と思っている87分署ファンも多いのではないか。何を隠そう、こう見えても俺も87分署のファンだった(←過去形で言わねばならぬ点が弱いけど)。確か「血の絆」あたりまでは読んでいるはずなんだがなぁ。
北島明弘「世界SF映画全史」(愛育社)
 税込み定価で9.030円もする本だが、これ一冊買っておけばこの先10年くらいはSF映画関連の本を買わなくても済むような気がするけどな。
唐沢俊一「猟奇の社怪史」(ミリオン出版)
 唐沢俊一にしては「クスリ通」「育毛通」に次ぐくらいつまらなそうな本なのではあるが・・・。
カール・ハイアセン「フラッシュ」()
 ジュヴナイルは原則として買わないことにしているのだが、作者がカール・ハイアセンともなれば話は別だ。
三遊亭金馬「金馬のいななき」(朝日新聞社)
 四代目三遊亭金馬、というよりは、やはり「お笑い三人組」の小金馬といった方が通りが良い・・・と言うような奴の歳はいったいナンボなんやねん? その金馬も早、現役最長高座歴の噺家になっていたとはね。
皆神龍太郎「ダ・ヴィンチ・コード最終解読」(文芸社)
 「ダ・ヴィンチ・コード」関連本も初期の頃に出た2~3冊を買ってはみたものの、さすがにこれだけ数が多くなってくると全て追っかけてはいられなくなる。でも、著者が皆神龍太郎ともなれば買っておいてもよいでしょう。
マイクル・Z.リューイン「カッティングルース (上・下)」(理論社)
 ジュヴナイルは原則として買わないことにしているのだが、作者がマイクル・Z.リューインともなれば話は別だ・・・って、なんだかつい最近同じような文章を書いた気がしなくもないが。
ジェフリー・A.ランディス「火星縦断」(早川SF文庫)
 この小説ってもしかして、21世紀版「火星の砂」といった雰囲気なのかなぁ? ちなみにクラークの「火星の砂」は600冊ほどあるマイ・フェイバリット・SFのうちの一冊である。
ラリイ・ニーヴン「リングワールドの子供たち」(早川書房)
 「リング・ワールド」のシリーズもこれで4作目だとか。何となくもっと沢山出ているのかと思ってたなぁ。1970年に第一作「リングワールド」が原著で出版されて34年を経て2004年に本書がようやく上梓された。実に息の長いシリーズであり、帯によればこの「子供たち」でついにリングワールドの謎が明かされるとのことなのだが、その謎がいったい何だったのかさえすでにすっかり忘れてしもうたわい。
ジョン・エヴァンズ「悪魔の栄光」(論想海外ミステリ)
 おおおっ、ポール・パインの「栄光シリーズ」だぁ! この本、今年の翻訳ハードボイルドベスト10にまず間違いなく入ると今から断言しておく。何故なら、たぶん年に10作もハードボイルドが訳されないような気がするからなのだが。
山田正紀「翼とざして アリスの国の不思議」(カッパノベルス)
 あくまでもファンの勝手な言いぐさだが、山田正紀もそろそろ本格推理を書くのに飽きて、出来るだけ早く冒険小説の世界に戻ってきて欲しいものなのだ。
東山彰良「愛が噛みつく悪い星」(カッパノベルス)
 何はともあれ、「オフ・ビート」という単語にめちゃめちゃ弱い俺なのだった。
エリック・マコーマック「隠し部屋を査察して」(創元文庫)
 奇妙な味の短編集。何が奇妙だといって、この本を俺が単行本の段階で買っていなかったのが実に奇妙だ。
山本禾太郎「山本禾太郎探偵小説選 2」(論創ミステリ叢書)
 そもそも山本禾太郎の選集を一冊出そうというだけでもある種の蛮勇と思えるのに、図に乗って第二集まで出すとは何事ぞ! 山本禾太郎を二冊も読みたいなんて酔狂な奴が一人でもいるんなら、ここに連れて来いってんだ。こりゃ俺みたいな「ただひたすら所有しておきたい」という莫迦を対象にした商売に他ならないもん。そもそも「禾太郎」という名前自体、正しく読める奴なんて日本に30人くらいしかいないだろうが!(ここまで文句付けるんなら買うなよ>俺)
いしい ひさいち「大問題 ’06」(創元文庫)
 現在の漫画家で「天才」と呼べるのは、このいしいひさいちただ一人ではなかろうか。天才は常にジャンルを創設し革新し続けるのである
J.J.コノリー「レイヤー・ケーキ」(角川文庫)
 英国発クライム・ノベルで近々日本で公開される映画の原作小説だそうである。で、その映画は「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」のプロデューサーが監督に初挑戦した作品らしい。予告編を観るとかなりカッコイイ。
爆笑問題「偽装狂時代 爆笑問題の日本原論5」(幻冬舎)
 時事ネタを扱ったもので言えば、いしいひさいちの「大問題」とこの「日本原論」さえ読んでおけば、世相の動きはほぼ把握できるな。「釈尊ファイブ」というギャグはなかなかに秀逸。 

▼このところ本はたいして買ってはいないが、DVDはよく買っている。
書店で売っている500円DVDでチャップリンの「ライムライト」「殺人狂時代」、S・キングのオリジナル脚本のTVM「ストーム・オブ・ザ・センチュリー」と同じくキング原作の「ライディング・ザ・ブレット」、ブレイク・エドワーズとピーター・セラーズの「ピンク・パンサー」コンビの「パーティ」、それに、やったね! ピーター・ジャクソン版「キング・コング」といったところ。「キング・コング」は当然、2枚組のプレミアム・エディションだいっ!
 それにしてもまさか500円玉一個でチャップリンの名作を自分の物に出来る日が来るとはね。実際に見かけたことはまだ無いが、チャップリンでは「街の灯」以外の長編は全て500円で買えるようになっていたんだ(ここ参照)。一度観て以来、ずっと手元に置いておきたかった「ストーム・オブ・ザ・センチュリー」のみがDVD未発売のために中古ビデオだが、上下巻合わせて4千円。映画館で見逃した「ライディング・ザ・ブレット」は近所のレンタルビデオ屋を数軒廻ってみても何処にも置いてなかったので業を煮やして購入してしまう。「パーティ」は前々から観たかった一本でもあるし、スティーブ・マーチンの「ピンク・パンサー」リメイク記念に買うことにした。でも、スティーブ・マーチン版「ピンク・パンサー」はたぶんロードショーでは観ないだろうけどね。「キング・コング」はもったいなさ過ぎて特典ビデオが観られねぇ!

 で、レンタルビデオで借りてきて観たのは「エレクトラ」と「ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ」「蝋人形の館」の三本。「キャットウーマン」「イーオン・フレックス」に次ぐ女闘美映画の「エレクトラ」は、何故だか日本人が敵役。主役の女刺客人エレクトラも「キル・ビルvol.1」に於けるルーシー・リューの「ヤッチメェナ!」と同じくらい非道い日本語を話します(笑)。 ロバート・ デ・ニーロ&ダコタ・ファニングの「ハイド・アンド・シーク」は、見終えて「こりゃまた見え透いた結末だなぁ。このラストが読めなかった奴なんているもんだろうか?」と思ったのだが、意外に近いところに先の読めなかった者がいることが分かった(この人)。なるほど、世の中には色んな奴がいるもんだ。ダーク・キャッスル製作の「蝋人形の館」はホラー映画としてもさすがにストーリーは古めかしいが、ラスト近くの崩壊し焼け落ちていく蝋人形館のシーンはなかなかに迫力がある。

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▼ポール・サイモンのニュー・アルバム「Surprise」を購入。今回はブライアン・イーノが共同プロデュースということで、果たしてどんな音になるものかと聴くまで期待と不安が入り交じっていたのだが、結論を言えばやはりポール・サイモンの音にはそぐわなかったんではなかろうか。ブライアン・イーノってグラム・ロック(←古い?)の人でしょ? 聴く前から何となくポール・サイモンとは水と油のような気がしてたもんなぁ。今回のサウンドは、アルバムで言えば「ハーツ・アンド・ボーンズ」あたりまで遡った感じなのかな。どうせ遡るんならばソロアルバム初期三作あたりまで戻ってもらえれば個人的にはすっごく嬉しかったのだが、たぶんそれは無理な注文。それにしてもこのアルバムでブライアン・イーノに付けられた肩書きの「SONIC LANDSCAPE」ってのは、いったいどういう意味なんよ?

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April 07, 2006

劇場公開SF映画2本

▼二本の封切り映画を観る。「サウンド・オブ・サンダー」と「ナイト・ウォッチ」の二本である。「サウンド・オブ・サンダー」は、ご存知ブラッドベリの「いかづちのような音」が原作。昔、この短編の題名を間違えて記憶していて「雷鳴のような音」と言ってしまったことかあったが、それじゃ「馬から落ちて落馬して」とおんなじだよな。監督はピーター・ハイアムズ。ハイアムズの映画ですぐに思い出されるのは「カプリコン・1」と「2010年」といったあたりで、SF映画を撮るのにはさすがに長けた監督である。SF設定がいくらいい加減であっても、語り口で大方の映画ファンは何となく騙せちゃうんじゃないの? 舞台が2055年ということで未来社会を走り回る未来の自動車がヤケに目立つと思っていたら、そのあたりはシド・ミードの手によるものらしい。ネットでの評判を眺めるとこの映画のCG特撮やタイム・パラドックスの設定に対して賛否両論--というかどちらかと言えば否々両論があるようだが、まぁそれほどまでにひどいものではない。一番すごいのは「進化の波」がホントに打ち寄せてくるところだわな。いったいどこから打ち寄せて来たんだか(笑)。
 もう一本は、ロシアでかなりヒットしたSF--実際はダーク・ファンタジーとのこと。こちらの原作もすでに邦訳が出ている。思えば俺がロシア映画を観るなんて「戦艦ポチョムキン」以来ではなかろうか。いや、さすがにそんなことはないな。封切りで「ヨーロッパの解放」三部作を観て以来か。それにしても間が開いたのだが。
 前評判では映像的にかなり面白いものが観られるかと期待したのだが、結果はそうでもなかった。何となくどこかで観たような印象の映像が多く、そこが残念。画面下に英語字幕、画面右に日本語字幕が出るようになっていて、英語字幕の方は色々と遊んでいるのに日本語字幕は背景色とかぶってやけに読みづらい。アメリカ公開版を日本に持ってきたせいでこうなっているのかと思ったら、どうやらロシア公開版自体にも英語字幕が付いていて、その英語字幕までが監督の手になるものらしい。三部作の第一作ということでストーリー自体はあくまでも「発端篇」。2作目以降がもしも日本で公開されたとしても、たぶんビデオスルーになっちゃうかもね。

▼郵政民営化には積極的に賛成してこなかったこの俺なのだが、過日、「手前ぇらは一度、骨の髄まで民営化されねぇと分からないようだなぁ!」と叫びたくなるような出来事に遭遇した。

 10年ほど掛けていた簡易保険の満期の知らせが郵便局から届いた。満期の受取額がたかだか2~3億程度のハシタガネなのでしばらく放っておいたのだが、しつこく言ってくるので保険証書や運転免許などの必要書類を揃えて近所の郵便局に受け取りに行くこととした。持参した書類を局員が一通りチェックした後に一言。「えぇと……、それではご本人さまの性別を確認できる書類は何かございますか?」
「あの……、ご本人さまの性別というと?」
「いえ、男性なのか女性なのかってことですよ」

 はぁぁぁぁぁ?

「いや、だからこの私がそのご本人さまなんですが」
「あなたが本人だろうが何だろうが、満期保険金の受け取り手続きには性別を確認できる書類が必要なんですよ」
 よく見ろよな、おい。子供の頃は確かに「あらまぁ、まるで女の子みたいに可愛いわねぇ」とよく近所のおばちゃんたちから言われたこの俺なのだが、さすがに昨今は女性に見間違えられたりすることはないんだけどな。
「だったら運転免許証を見たらいいじゃないですか」と俺。
「普通の人は簡単にそう思うかも知れませんが」と郵便局員。「免許証には性別を記載している欄はないんですよ」
 あ、そうなのか。なるほど、言われてみれば確かに運転免許には性別は書かれていないのだった。
「あのぉ……、私が女性のように見えますですか?」とついつい下の方から局員に尋ねてしまう。
「いえ、紛う方なき男性ですよね。それもどちらかと言えば苦み走ったいい男」と局員。
「だったらそれでいいじゃないですか」
「いえ、それがそういうわけにもいかないんで」と局員。「やはり書類がないとねぇ」そう言う顔は「ふっふっふ、どうです、これが例の有名な『お役所仕事』というやつなんですぜぃ」と言わんばかりの顔をしている。

 それにしても、世の中にはポッと頬を染め目を潤ませながら俺の性別を間違いなく保証してくれる女の子たちがそれこそ星の数ほどいるというのに、何故この郵便局員はそんな簡単なモノの道理が分からんのだ。それにそもそも満期保険金の受け取りに際して俺の性別が如何なる影響を与えるのかがさっぱり分からない。その点を尋ねてみると、どうやら性別の違いによって掛け金の額が変わるらしいのだが、こちらはその保険に対して契約段階での一括払い込みでとうに済ませているのである。これから保険の掛け金を払っていくというような段階ではないのだ。こりゃ単なる嫌がらせか、あるいは単に払い渋っているだけではないのか?

「じゃあ、いったいどうやって自分自身の性別を証明すればいいんですか?」と俺。何だよ、この不条理な質問は。まるでカフカの小説の主人公にでもなったような気分である。近くにいた若い女性局員を指さしながら「何ならあの子の前で素っ裸になってみてもいいんですが」と嫌みったらしく言ってやる。もしもこの俺が女性ならば、これくらいのことでは同性に対するセクハラにはならんはずだ。
「もしかして平成16年以前に発行された保険証はご自宅に保管されてはおられませんか?」と局員。そんなもん、無論あるはずもない。「では念のためにお訊きしますが、今、パスポートはお持ちじゃないですか?」
「持ってません」と俺。海外旅行中でもあるまいし、常にパスポートを持っているはずがない。それにだいたいこの俺は海外旅行が大っ嫌いなので、はなからバスポートなど作っていないのである。
「それでは厚生年金手帳は?」
「そんなものは見たこともありません」と俺が答えると、「おそらくお勤めの会社が保管しているんじゃないかと思います」との答え。とりあえずはその厚生年金手帳なるものが必要だと分かったので、日を改めて受け取りに行くこととなった。とんだ無駄足である。

 翌日、会社に預けられていた厚生年金手帳を手に再度、郵便局へと赴く。

「なるほど、どうやらあなたは本物の男性のようですね」と昨日の郵便局員。おいっ、今まで疑っていたんかい!
 これでようやく窓口でのシチ面倒な書類のやりとりが終わったと安堵しかけたところで局員が顔を挙げて言った。「この年金手帳を作った時のあなたの性別はこれで分かりました。で、現在のあなたの性別を証明できる書類は何かあります?

 見りゃ分かるだろがよっ! ……と大声で叫び出したくなる気持ちは無理に喉の奥へと押し込む。所詮、相手は木っ端役人だ。マニュアル通りに動いている単なる操り人形に過ぎない。
「私の今の性別はどんな書類で確認できるんですか?」と疲れ果てた声で尋ねる俺なのであった。
「そうですね」と局員。「やはり戸籍謄本か戸籍抄本ということになりますね。あ、それで一つ、朗報がありますよ」
「それは何です?」と俺。
「謄本か抄本があれば厚生年金手帳は不要ですから」

・・・それを早く言わんかぁい! だったら最初から区役所に行って貰ってきてたわい!

 ということで、政府には郵政民営化を更に一段と強力に推進して貰いたいと切に願う俺なのだ。いい加減にせぇよ、ったく。

▼買った新刊。
 矢野誠一「落語CD&DVD名盤案内」(だいわ文庫)
 「文藝別冊 古今亭志ん生 落語の神様」(河出書房新社)
 五条瑛「愛罪(R/EVOLUTION5)」(双葉社)
 戸梶圭太「宇宙で一番優しい惑星」(中央公論新社)
 と学会「と学会年鑑 YELLOW」(楽工社)
 レヴ・グロスマン「コーデックス」(ソニー・マガジンズ)
 田中哲弥「やみなべの陰謀」(早川JA文庫)
 ジョセフィン・テイ「列のなかの男」(論創海外ミステリ)
 ラング・ルイス「死のバースデイ」(論創海外ミステリ)
 バロネス・オルツィ「レディ・モリーの事件簿」(論創海外ミステリ)
 ジェイムズ・カルロス・ブレイク「荒ぶる血」(文春文庫)
 マックス・アラン・コリンズ「ピンクパンサー」(文春文庫)
 
 早川JA文庫で出た田中哲也という作家に記憶はなかったが、大森望氏による解説を読んで、あぁ、あの人かとようやく思い出した。この人の書いた小説とは縁がないが訳を担当した「悪魔の国からこっちに丁稚」(電撃文庫)は買ってあるのでる。この「悪魔・・・」を買った理由は、無論、作者がスプレイグ・ド・キャンプということもあったのだが、本屋で田中哲也の書いた訳者あとがきを立ち読みしてぶっ飛んだことが大きい。俺がそのあとがきのどんなところにぶっ飛んだのかといえば、この「やみなべの陰謀」でその部分を大森望氏がまるっと引用されているので一度ご照覧あれ。 

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▼ドナルド・フェイゲンの十三年ぶりの新譜「モーフ・ザ・キャット」をようやく入手する。アルバムのどこから聴いても一発でドナルド・フェイゲンだと判る音造り。偉大なるマンネリ、でもそれがすげぇカッコイイ!

▼古本購入は一冊も無し。このところは古本屋を覗くことも滅多にない上に目録注文もしなけりゃ古書市にも行かないという、古本とはずいぶんとかけ離れた生活をしているなぁ。

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January 31, 2006

その他もろもろ備忘録

▼忙しくてしばらくここに書き込まないでいるとBLOG PETのやりたい放題にされてしまうので、あくまでも備忘録的に。

七人のマッハ!!!!!!!!を観てきた。東京では昨年から上映されていたようなのだが、名古屋では年明けになってからようやく公開されたのだった。
 この「七人のマッハ!!!!!!!!」という映画は無論のこと、純粋にアクションだけを愉しむもの。他には何にも無い点がかえって潔い。この手の映画は作る側も観る方も圧倒的にIQを低くして観ないと楽しめない。殺されても殺されても何処からか湧いて出てくる村人やテロリストたち、たかが麻薬の密造人風情なのに何故だか核ミサイルまで持っている悪党ども、サッカーボールを頭に当てられただけでバタバタと倒れていくザコ敵連中・・・・。観る側にもそういう些末な瑕瑾には出来るだけ目をつぶって鑑賞する心構えが必要である。トニー・ジャー(最近では「トニー・チャー」との呼び方が定着しつつあるようなのだが)の超人的アクションにはさすがにひけを取るが、この「七人・・・・」もアクション映画としてはなかなか楽しい仕上がりだ。七人のスポーツ選手たちの特技が映画の中のアクションにあまり活かされているとも思えないのが難点なのだが(意外に見栄えするのは新体操、駄目なのはサッカーとセパタクロー)、あいかわらずホントに殴りあったり蹴りあったりしているのでそれだけでも充分に痛そうではある。特にすごいのは、やっぱり命がけのスタント・シーン。言葉だけの「命がけ」ではなく本当の意味で命を賭けた--しかも、撮影後に無事に生存する確率の方がどちらかといえば少ない--必死のアクション場面はやはり見応えがあります。東南アジアってホントに人間の命がやっすいよなぁ。映画のラストに流れるメイキング映像を観ていると、「いやぁ、たまたま今回は運がすっげぇ良かったので何とか命だけは助かりましたぁ!」というようなとんでもないスタントを終えた直後、スタッフから起こるまばらな拍手が何とも痛々しいほどに素敵だ(笑)。劇場で「トム・ヤム・クン」の予告編が観られたのもラッキーだった。

REX_DVD▼レンタルビデオ屋をうろうろしていたら「REX レックス」というDVDを見かける。カバジャケを見ると、大都会を歩く恐竜の脚を背景にして映る三人の男女(写真左)。「ジュラシック・パーク」以降、よくある恐竜パニックものの一本だろうと思ってその場に捨て置きかけたものの、もう少し丹念にスタッフ陣を眺めてみると、原作がなんとエリック・ガルシアだ! そう、これはあの「さらば愛しき鈎爪」を原作としたTVムービーだったのだ。いやぁ、こんなものがDVDで出ているなんて、ミステリ関連の雑誌のどこにも出てなかったぞ。いや、もしかするとどこかの雑誌の片隅にでも書いてあったのかもしれないが、まるで記憶にない。それにしてもこのカバジャケの写真や「現代に復活した太古からの遺伝子―想像をはるかに超えた無敵のミュータント・ヒーロー<レックス>誕生! どいつ<狼>もこいつ<ヴァンパイア>もまだまだ餓鬼<ガキ>だぜ!」なぁんて宣伝文句から、このビデオの原作が「さらば愛しき鈎爪」だなんていったいどうやったら分かるというのだ。そもそも「さらば愛しき鈎爪」の主人公の恐竜私立探偵はヴェロキラプトルなんだから、レックスなんて関係ないはずなのに。
 ・・・・などと文句を呟きながら、とりあえず観てみました。主演のロリー・アン・アルターという男優こそ馴染みがないが、ダニエル・ボールドウィン、フェイ・ダナウェイ(!)、アイザック・ヘイズ(!!)なぁんて(そこそこ)豪華な面々が脇を固める。フェイ・ダナウェイなんて、今、こんなドサ回りに近いような仕事をやっているんだなぁ。思わず「栄枯盛衰」とう言葉が頭をよぎる。そのついでに、「巨乳&スカトロマニアが喉から手が出るほど欲しいもの--(小池)栄子聖水」という言葉もちょっとだけ頭をよぎる。
 本編自体は、観たからといって、これからの一生、心に残るような傑作ではないが(当たり前か)、俺のように「『さらば愛しき鈎爪』を原作とした映画を観たぞぉ!」・・・・とどこかで言いたい人はぜひ。

▼同じくレンタルDVDで、かねてより懸案の「フォーガットン」も観た。様々な媒体から、いくら何でもこの結末は無いよなぁ・・・・というような情報を事前にインプットされ過ぎていたせいなのか、なに、そこまでひどいものとは思えなかったな(無論、誉められるような出来ではないのだが)。ひょっとすると、事前に接していたダメダメ情報の過剰さによって俺の心に耐性が出来ていたのであろうか? ちなみに「映画秘宝3月号」は毎年恒例の「映画秘宝ベスト10&トホホ10」発表。てっきりこの「フォーガットン」がトホホ分野でかなりの票を集めるかと思っていたのだが、意外にそれほどでもない。俺同様、観る前に心に耐性の出来ていた人が多かったということなのかな?

▼売れ残りビデオの安売り特売で爆笑問題の「new treasureship」(日本ビクター)というコントビデオを買う。定価3,800円のビデオが何と7割引だぜ。先日、TVで久々に爆笑問題の漫才を視たが、やっぱり面白ぇなぁ。

▼しかし、このところで観たDVDの中で心の底から観て良かったと思えた一本は、やはり「キング・コングができるまで 製作日記」ということになるだろう。これは単なるメイキングではなく、現在のハリウッドのメジャー映画が出来上がっていくまでにはいったいどれほどの手間と知恵と労力を集めなければならないか、に関するドキュメントだ。スクリーンの片隅にほんのちょっぴり映る(時には映るはずもない)セットや小道具、髑髏島のジャングルに生える苔や土の色、果ては画面の隅に転がっている石の形に至るまで、果たしてここまで凝る必要がホントにあるのかと思わずため息をつきたくなるほどに考えに考え抜かれて(ピーター・ジャクソンの映画は)作られているのである。たとえ「キング・コング」を観ていなくとも、映画好きの方々やもしもこれから先に映画製作に関わりたいと思っているような若い人たちにはこのDVDは必見だろう。もっとも、まだ「キング・コング」すら観ていないような輩は、どっちにせよたいした映画好きでもないだろうけど。つーか、そんな奴ぁ、決して映画を作りたいなんて思うなよ!
 ともかく、スタジオ撮影の最終週、疲労の極みに達したピーター・ジャクソンが、撮影中でも少しでも居眠りができるようにと、一日だけという条件でわざわざニュージーランドまで呼んだピンチヒッターの監督代行が、ブライアン・シンガーとフランク・ダラボンの二人! 何とまぁ豪華なことか。それぞれ僅か一日だけの代理監督を務めたのだが、「キング・コング」のエンドロールの中で彼らの名前は正式にクレジットされていたっけか?
 それと、この製作日記の中でピーター・ジャクソン本人の口から「キング・コング2」と「3」の製作も発表されている。「2」は今年6月、「3」は今年の年末に早くも公開予定だとか。時代設定は1940年代。二代目コングは今度はヨーロッパに連れて行かれてヒットラーの軍勢と戦うんだそうな。う~む、つくづく凄いことを考えるもんだ。

▼買った新刊はあいかわらず手短に。

 ブライアン・ラムレイ「地を穿つ魔」(創元推理文庫)
 唐沢なをき「漫画家超残酷物語」(小学館)
 みうらじゅん「カスハガの世界」(ちくま文庫)
 池上永一「シャングリ・ラ」(角川書店)
 矢野誠一「酒場の芸人たち」(文春文庫)
 筒井康隆「銀齢の果て」(新潮社)
 グレッグ・ルッカ「逸脱者 (上・下)」(講談社文庫)
 エドワード・D.ホック「サム・ホーソーンの事件簿 4」(創元推理文庫)
 パトリック・ニート「シティ・オブ・タイニー・ライツ」(早川書房)
 山本弘「まだ見ぬ冬の悲しみも」(早川書房)
 米原万理「必笑小咄のテクニック」(集英社新書)
 クリフォード・ウィッティング「同窓会にて死す」(論想社海外ミステリ)
 アントニー・ギルバート「つきまとう死」(論想社海外ミステリ)
 ジョン・クリーシー「トフ氏に敬礼」(論想社海外ミステリ)
 ノーマン・ベロウ「魔王の足跡」(国書刊行会世界探偵小説全集)
 有栖川有栖「謎は解ける方が魅力的 有栖川有栖エッセイ集」(講談社)
 チャールズ・ベノー「レッド・ダイヤモンド・チェイス」(早川HM文庫)
 夢枕獏「楽語・すばる寄席」(集英社)
 スティーヴン・キング「ダーク・タワーⅢ 荒野(上・下)」(新潮文庫)
 ジョン・クリード「シャドウ・ゲーム」(新潮文庫)
 「NHK知るを楽しむ(2005年12-2006年1月) 私のこだわり人物伝」(日本放送協会)
 「ミステリマガジン 2006/3月号」(早川書房)
 「SFマガジン 2006/3月号」(早川書房)
 「大槻ケンヂのプロレス格闘技世界の大凡戦」(洋泉社MOOK)
 「笑芸人 (Vol.17(2005冬号))」(白夜書房)

 この新刊本の中で入手に意外に手間取ったのは「漫画家超残酷物語」と「シャングリ・ラ」の二冊。「漫画家超残酷物語」は昨年12月に出版されたばかりだというのに、もう在庫切れで版元やネット書店も含めて入手が叶わず。唐沢なをきってそんなにも売れてる漫画家とも思えないのだが(いや、そんなに売れていないからこその在庫切れなのか?)。昨年のミステリベストテン選びの中で何度か名前の挙がっているのを見かけた「シャングリ・ラ」も、買うのをちょっと躊躇している間に店頭ではさっぱり見かけなくなった一冊。「超残酷物語」の方は、たまたま平積みになってる本屋で見つけ、「シャングリ・ラ」の方は俺の密かな啓蒙活動のおかげもあってか(?)昨年末に重版されていたおかげで、どちらも何とか手に入ったが、最近では古本よりも賞味期限の短い新刊の方が探すのがよっぽど大変だ。
 筒井康隆久々の長編小説である「銀齢の果て」は、実に久しぶりに著者お得意のドタバタが楽しめる。齢七十歳を過ぎてこれだけのスラップスティックが書けるのは、何ともはやご立派と言うしかない。何だかすっごく久しぶりに筒井康隆の純文学寄りではない面白小説を堪能したぁ……という感じだな。しかもこの小説の元ネタは高見広春の「バトル・ロワイヤル」。筒井のような一応は「巨匠」と呼ばれる立場のベテラン作家が新人作家の処女作の設定を借りて長編小説を一冊書き上げちゃうんだから、やはりこれは並みの「巨匠」の出来ることではない。おそらくは筒井康隆最後のスラップスティック長編となることを予感しつつ読者は満喫されたい。
 夢枕獏の「楽語・すばる寄席」は話芸集団SWAを構成する林家彦いち、三遊亭白鳥、神田山陽、春風亭昇太、柳家喬太郎の五人の若手噺家(一人は講談師だが)のために書き下ろされた落語集。とりあえず最初の一編だけ読んでみたが、タイミングの悪いくすぐりはともかくとしても噺としての結構が悪すぎる。夢枕獏はやはり落語作者には向いていないようだね。こんなものを書いている暇があるんだったら、伝奇ものや格闘技ものを早く書いて欲しい・・・と夢枕ファンなら思うと思うがなぁ。
「NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」は教育テレビで放映されている(らしい)同タイトルの番組の雑誌(テキスト)化。どんなに暇でも教育テレビなど視る習慣はないからそんな番組の存在自体知らなかったが、乱歩と風太郎という二人の異能児ををそれぞれ大槻ケンヂと鹿島茂が論じている。その大槻ケンヂ関連でもう一冊、「大槻ケンヂのプロレス格闘技世界の大凡戦」は昨年の夏前に出たMOOK本だが、半年以上過ぎてようやく本屋で見つけた。プロレスにしても乱歩にしても語りたい人は世に山ほどいるはずなのだが、そういった人たちを尻目にシレッと語ってしまう無分別さが大槻ケンヂの良い点だと思う。
 遅まきながら「笑芸人」の2005年冬号もようやく買う。今回の特集(「ここが笑いのG(ギャグ)スポット!」)にはあまり食指が動かなかったのだが、ここで買うのをやめると創刊号以来の購入記録が途絶えちゃんもんな。

▼この間、古本も何冊か買ってはいるが、それについて今、書いている余裕がない。所詮はBOOK-OFFで拾った本なのでたいして書くこともないのだが。

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June 22, 2005

Musical Baton

 石井春生里見両名から、時を同じくしてMusical Batonなるものが廻ってきた。このMusical Batonなるものの正体はよく分からないが、このバトンを受け取った人は一週間以内に5人に回さないといけないものらしい。おそらくはインターネットを悪用した不幸の手紙かネズミ講みたいなもんだと思う。カナダに住むジョーンズさんは自分のところでこのMusical Batonを止めたために、その三日後に交通事故で死にました・・・てな奴である。まだ死にたくないので答えることにする。
 
●Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)

 たぶんゼロ。パソコンをリセットした時に鳴る「ピポッ」という音まで入れていいんだとしたら、おそらく2バイトくらいのものか?

●Song playing right now (今聞いている曲)

 今は会社で服務中に書いているので、当然、音楽など聴いているわけがない。おい、社会人をナメんなよ。音楽を聴きながら・・・なぁんて、そんなチンタラした仕事なんてやってるもんかい。

●The last CD I bought (最後に買った CD)
2005-05-15
 この日記によればライザ・ミネリ“Minnelli on Minnelli”(輸入盤)ということになると思う。しかし、まだ未聴だ。
 
 
 
 
 
●Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me (よく聞く、または特別な思い入れのある 5 曲)

 曲名を挙げるのは難しい。アルバムでいうと・・・。

B0000BHZOB
“明日に架ける橋”サイモン&ガーファンクル
我が生涯を通じて永遠不滅かつ最高のアルバム。俺が産まれて初めて買った洋楽アルバムでもある(産まれて初めて買ったシングル盤は、フォーク・クルセイダーズの「帰ってきたヨッパライ」)。ポール・サイモンのソロ・アルバムでは“There Goes Rhymin' Simon ”、アート・ガーファンクルのソロ作では“Breakaway”が最高だ。
 
 
nightfly
“ナイトフライ”ドナルド・フェイゲン 
収録曲の全てが完璧なまでに手が込んでいてなおかつ一曲一曲が一点の曇りもないまでに超傑作揃い。たぶんPOP MUSICの歴史の中で最高峰に位置するアルバムだと思う。
 
 
 
mickelfranks

“ヴェリー・ベスト・オブ・マイケル・フランクス”マイケル・フランクス
マイケル・フランクスの初期のアルバムは全て傑作揃いだけど、それぞれにお気に入りの曲が多くて選びきれないので苦し紛れにここではベスト盤を推奨しておく。
 
 
 
onstage
“オン・ステージ”ロギンス&メッシーナ
ケニー・ロギンスとジム・メッシーナの残した最良のライヴ・アルバム。ケニー・ロギンスが弾き語りのソロで歌うオープニングからの数曲も素晴らしいが、中でもベスト曲は二人がライヴ・アーチストとしての実力を遺憾なく発揮した“Angry Eyes”と“Vahevala”の二曲。ジム・メッシーナはギタリストとしての評価が何故こうも低いのかが謎である。
 
 
spyrojaira

“モーニング・ダンス”スパイロ・ジャイラ
 これまたスパイロ・ジャイラの名曲揃いの代表的アルバム。ラテンでトロピカルなサウンドはいつ聴いても気分がウキウキしてくる・・・って、う~む、何だかアルバムにくっついているライナーノーツみたいな文章だな、こりゃあ(笑)。
  
 
 
 というようにとりあえず思いつきでアルバム5タイトルの名を挙げてみたけれど、俺ってやっぱり「大人」だよなぁ。自分で言うのもなんだが、やっぱり趣味がいいやね(笑)。しかし、こういうのって「60年代ムード歌謡で5曲」だとか「ピアノ協奏曲で5曲」「相撲甚句で5曲」といったようにもう少しジャンルを細かく指定してくれないと、あまりにも対象範囲が広がりすぎて選定なんてとてもできるもんじゃないよね。俺の興味の中心とは決して言えない音楽関係なんでまだ適当に選ぶことができたんだけど、これが「好きな本」や「好きな映画」で五つ選べ・・・なぁんてもしも言われたとしたら、最初っから選ぶ努力を放棄しちゃうよなぁ。

 で、さて、次に誰にバトンを渡さそうかと思ったら、気が付けば俺の知り合いはほとんどがすでに先に答えてしまっているではないか。このような速さでインターネット上でウイルスは広まっていくのだ・・・ということを体感できる現象だよな、こりゃ。

 仕方ないので、性格が悪いために友達がほとんどいないのでまだバトンが誰からも回されていないという数少ない知り合いの中から、独身女性しばりいるかレオナcoinメイの4人を選んでみたが、どうしても5人目の独身女性の知り合いが見あたらないっ。「独身女性」ったって、かなりトウのたったのも無理矢理入れてやってるんだけどなぁ(-_-;)。仕方ないので、音楽とはあんまり縁のなさそうな生活をしているよしだ まさしも入れて五人だっ! 指名された人たちは、隕石に当たったと思ってあきらめてくれ。

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April 28, 2005

何故今、モンティ・パイソン?

 現在、某缶コーヒーのCMのBGMで流れているのが、モンティ・パイソン最大の名曲「Always Look on the Bright Side of Life」。サビ部分の口笛のパートが印象的な軽快な曲で、もともとは映画「ライフ・オブ・ブライアン」のラストシーンで流れる曲。それが証拠にこの歌の最後に「さぁみんな、これで映画はおしまいさ。ちなみにこのパーツは、ホテルのロビーでレコーディングしてるんだぜ」なぁんて台詞も出てくるくらいだ。作詞作曲と歌は当然パイソンズ音楽担当のエリック・アイドルだ。ちょっと前にはナイキのCMでも使われていたらしい。ほとんどのカラオケにもこの曲が入っているのを知った時にはホントに驚いた。俺以外のいったい誰がこの歌を日本で歌うんだっての?? これに加えて「Sit om my Face」が入ってる場合もあるけど、どこのカラオケメーカーの場合でもこの「Always Look on the Bright Side of Life」が入ってないカラオケは無いとほぼ断言できる。そのくらい有名な曲だ。俺も苦しい時やくじけそうになった時、この歌を口ずさむことで何度、新たに生きる勇気が湧いてきたことか・・・って、そんな経験は一度もないが、ともかく思わず口ずさみたくなる曲である。
 ところで何故、今頃になってモンティ・パイソンの曲が・・・と思っていたら、ようやく謎が解けた(と思う)。
 今、ニューヨークはブロードウェイで最もヒットしているミュージカルの題名が「Spamalot」という。この題名だけでも窺い知れると思うが、中身はモンティ・パイソンのミュージカル化なのだ。で、劇中でこの「Always Look on the Bright Side of Life」も当然使われているってわけ。但し、ミュージカル「Spamalot」自体の元ネタは「ライフ・オブ・ブライアン」ではなく「モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル」ということなのだが。演出が「卒業」のマイク・ニコルズ、主演がティム・カリー。ティム・カリーといえば、未だに代表作は「ロッキー・ホラー・ショー」のフランクン・フルター博士役だろうが、それ以外にもS・キングの「IT」の殺人ピエロ役をはじめとして、どちらかといえば変な役を好きこのんで演じる人(というか、そういう役しか回って来ない役者)だ。パイソン・メンバーではジョン・クリースが声の出演だけしているらしい。

 おそらくは日本のCMディレクターがブロードウェイにネタを探しに(てゆーか、盗みに)行き、評判の「Spamalot」を観て、「お、この曲、なかなかいいネ!」とばかりに飛びついたんだろうけど、ま、ホントにいい曲なんでみんなもカラオケで歌ってみてね(ちょっとアホっぽく歌うのがコツ)。

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April 24, 2005

新宿!

 実にハードな出張だった。訪れたのは東京→茨城→埼玉→神奈川→東京と、たかが一泊二日の出張にしてはいくら何でも動きすぎ。しかもそれぞれの訪問先での交渉も胃がキリキリと痛むようにシビアなものばかりだ。
 まぁそんな中で唯一、のんべんだら~りと出来たのが「熱烈歓迎未読王新宿オフ」である。これだけ緊張しなくて済むオフも珍しい。まるで名古屋オフのようだ(笑)。
 ということで待ち合わせ定刻時間の少し前にホテル入り。めんどくさいんで俺の宿泊先である新宿プリンスの地下ロビーを待ち合わせ場所にして大正解だったな。数年ぶりに訪れた新宿は、もう俺にとってはすっかり異邦の地同然の変貌ぶり。闇市とかはもう全然無いんでやんの。
 とりあえず集合時間が来るまでの時間つぶしにホテルに隣接された西武新宿ペペ内の本屋でリック・リオーダン「殺意の教壇」(小学館文庫)を購入。ふと横を見るとCD屋もあったのでついフラフラと覗いてみると、俺が長年探していたケニー・ロギンスの「Alive!」のDVDがあったのでウホウホ言いながら買う。もっともたった今、この文章を書きながらamazonで検索してみたらあっさり見つかってしまった(しかも俺が買ったのよりも安い値段で!)のがちょっとショック。ホントに俺ってこのDVDを探してたのかよぉ! ついでに輸入盤のポール・サイモン「The Paul Simon Songbook」も購入。このCD、もちろん国内盤は持っているのだが、輸入盤にはボーナストラックが2曲入っているのでいつか買わねばと思っていたものなのだ。
 そうこうしている間に集合時間の7時。ロビーに行くとそこに集まっていたのは元「絶好調」の石井春生、現「未読王ファンクラブ」会員の里見カエルと女性ばかり。そんな中に俺が入場していったのだから(さすがに年齢層もそれなりに高いので)嬌声こそ沸き起こらなかったものの、みんな、キラキラと目を輝かせてうっとりと俺を見つめている、まるでヨン様にでもなった気分だ。もう一人、石井春生に誘われて俺が小学校2年の時に離ればなれになった憧れの井上マリコ先輩も来ていたのだが、今やもうすっかり昔の面影は無い。というよりも、ほとんど性別すら変わってしまったかのようだ。
 そうこうしている間に“夢の密室”ことたっくんが登場。ネット上の付き合いは古いものの実世界でのたっくんとはほとんど面識が無いので「脂ぎった小太りの中年男」と予想していた俺なのだが、葵がすかさず「ほら、脂ぎってなんかいないでしょ」と言う。せっかく言うんなら「小太り」もついでに否定してやれよな(笑)。
 その後、よしだ まさし登場。眼前まで来ても、目は空中のあらぬところを見ていて我々の存在にまるで気づかない。もしも全品三冊200円の古本屋にでも入ったりするとあんな目付きになってるんだろうなぁ、きっと。続いて後輩の北原尚彦もやってくる。後輩と言ったって、俺に今まで献本の一つもしやがらねぇまるで頼りにならない後輩なのだが。北原より一足早くやってきた「手下その2」ことK藤の先導で予約を入れてある「月の雫」なる店に到着。この店、紀伊國屋書店のほとんど真横にあるんだなぁ。

 狭い座敷に通されると俺を中心としてものの見事に「古本馬鹿組」「ただの馬鹿組」の二派に分かれる。その後、遅れてきた彩古がやって来て、まっしぐらに「古本馬鹿組」の方に向かったのは当然と言えば当然のこと。オフに遅れてきた理由は、どうやら会社帰りに池袋の古本即売会に顔を出してきたらしい。そのことに関して誰からも非難も批判も一切出ないのは、ある意味、さすがというか、まぁみんなもうすっかり諦めているんだろうなぁ。最後に今日の幹事のくせしてついさっきまで寝てたという「手下その1」ことO竹(←これでもサラリーマン)も到着し、これでとりあえず今日の参加者全員が揃った。
 あとはまぁいつものオフの如し。「古本馬鹿組」とも「ただの馬鹿組」とも、ホント、会うのは久しぶり--てゆーか、わざわざ名古屋まで俺に会いに来た「未読王ファンクラブ」の里見、カエル両名を除くほとんどの人たちと会うのは世紀をまたいでいるのだが、そこはネットつながりの利点なのか、互いの日常を知っているので何だか今まで毎日会っていたような気分。自己紹介を兼ねて、全員がこの俺に過去にどれほど世話になったのかを発表して貰ったのだが、これがまぁみんな話が実に長くてなおかつ面白い。どれほど話しても俺から受けた恩恵は語り尽くせない・・・といった風情である。俺はマザー・テレサか!と言いたくなるほどだが、こういう話なら何時間でも心地よく聴いていられるな。
 そんな話の中で印象に残っているのは、石井春生が、俺が東京にいた間ずっと住み着いていた祐天寺の出身だったという驚愕の事実。しかも訊けば、俺の下宿と石井春生の実家はおそらく百メートルも離れていないと思われる。それじゃ絶対に一度や二度は祐天寺の古本屋の中ですれ違ってたよなぁ。
 もう一つは、今年、よしだ まさしが本の雑誌社から出す予定の富田常雄の評伝は予想以上に出版が早まるかもしれないということ。本の雑誌社は意外に仕事はきっちりやる出版社なのだ。・・・但し、進行状況も含めてそれを著者に一切教えないのが玉に瑕なのだが。
 予定を一時間ほど延長したのにも関わらず楽しい時間はあっという間に過ぎる。それにしても右を見ても左を見ても、「絶好調」時代の話と学生時代の逸話中心でどっぷりとノスタルジィに浸かった数時間だった。思いの外楽しかったので、これから毎週週末に上京してオフをやってもらおうかなぁ(迷惑か?)

 店を出るが時計を見るとまだ10時。まだまだ子供の時間だ。よしだ まさしと手下その1のO竹を誘ってゴールデン街へと向かう。ゴールデン街なんて実に10年ぶりくらいだ。目指すは「深夜+1」である。
 店に着くと他のお客はゼロ。「あれ、会長は?」とよしだ まさしが尋ねると、トイレの中から「いるよぉ」との声が。店主にして日本冒険小説協会の内藤陳会長である。ミステリとコメディ双方のヲタクであるこの俺にとって内藤陳は二重の意味で雲上人である。トリオ・ザ・パンチの頃の今にも切れそうなナイフのように研ぎすまされた印象とは異なり、今ではすっかり菩薩のような風貌で、失礼ながらもお歳を訊くとまだまだ十分にお若い。こちらは子供の頃からTV画面の中で観ている人なので何となく感覚が変になるのだ。
 よしだ まさしが俺のことを「この人、風呂でシャンプーしながら本を読む人です」と紹介してくれるが、そんな変な紹介の仕方があるかいっ! そのまま貸し切り状態で会長のお話を拝聴する。すっごく贅沢な時間である。
 終電に間に合うようによしだ まさしが引き上げたので、残された我々二人は引き続き、内藤陳会長のお話を。ミステリの話は無論のこと、映画や最近のお笑いブームに至るまで話題は多岐にわたり実に楽しい時を過ごさせてもらいました。特に師匠である泉和助の話が聴けたのは収穫だったなぁ。明日もあるので後ろ髪を引かれつつ、一時半過ぎにホテルに引き上げる。おかげで翌日は移動中の電車の中で、ほとんど寝て過ごす羽目になったけど。
 
 翌日夜、全ての仕事を終えて名古屋に帰着。その足で三省堂書店に駆け込み、とりあえず原寮の「ハードボイルド」(早川JA文庫)とチャック・パラニュークの「ララバイ」(早川書房)の二冊を購入。「ララバイ」は、聴いた者が全て死ぬという呪いの子守歌を巡るホラーらしい。これって、もしかしてモンティ・パイソンの「聞けば誰でも笑い死にする恐怖のジョーク」というスケッチと同趣向じゃないのか?

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March 10, 2005

昨日買った新刊&CD

 所用で栄町に出かけたついでに新刊書店に立ち寄る。
五條瑛「恋刃-Lanset(R/EVOLUTION 4th mission)」(双葉社)。
 「R/EVOLUTION」シリーズの第四作目。すでに大藪春彦賞を獲ったとはいえ、本格的なブレイクにはまだまだ至っていない五條瑛。いつか大化けする日がやって来るとは思うのだが。それにしても作者が女性だとは到底思えないハードな題材の五條瑛の作品に、デビュー作からいきなり目を付けてたキャラ萌え腐女子たちの嗅覚ってのは、ホントものすごいやね。
 この書店は本の購入価格に応じて貯めたポイントで割り引きが効くサービスを実施しているので、今回は200円分サービスしてもらえた。ラッキ~。

 ここの本屋の駐車場料金は3,000円以上買わないとタダにならない仕組みのため、併設されたCDショップも覗いてみる。このところ、数年ぶりに軽度の「ジャズをちょっと聴きたい病」に罹っているので、何かそちら方面のCDでも買ってみようかと思ったのだ。で、買ったのはこれ。
147 「BLUE NOTE ever! 90's」(東芝emi 、TOCP67592)。創立65年を迎えたBLUE NOTE レーベルの中から選りすぐった90年代ベスト盤とのこと。俺はコアなジャズ・マニアでもないので(ミステリマニアに喩えればせいぜい「京極夏彦大好き~♪」と言ってるレベルあたりか)、まぁこのあたりがお手頃だろう。CDの値段も1,800円とお手軽価格だ。この1,800円と先に買った「恋刃」の金額を合計すれば、駐車料金がタダになるハードルの3,000円は越えたな・・・と思いながら支払いを済ませようとすると、CDショップの方でも割引ポイントが貯まっていると言われる。「500円割り引けますけど、どうなさいます?」
 もちろん、割り引いてもらう。
 で、階段を降りながら先ほどのレシートとCDのレシートの支払額を合計してみると・・・・・・・・2,990円! 10円足らんがなっ! とはいえ、本にせよCDにせよ、もう買いたいものは無いぞ。

 渋々、駐車料金を払って帰宅・・・。

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February 25, 2005

Liza is Back!!!

561 ああ、いつまで経っても音楽の話題が止まりゃしないっ! いっそのこと、此処をこのまま音楽関連のサイトにでもしてやろうかな。
 昨日までに取り上げてきたブライアン・ウイルソンサイモン&ガーファンクルも復活組と言えるし、国内ミステリの世界でも昨年は、原寮、矢作俊彦、綾辻行人、法月綸太郎そして天城一あたりの復活が様々な形で話題となった一年だったが、個人的に、昨年聴いたCDの中で最も劇的に復活を遂げたと思ったのは、何と言ってもライザ・ミネリの''Liza's Back''だ。
 ライザ・ミネリはご存じの通り、ジュディ・ガーランドとビンセント・ミネリの愛娘であり、赤ん坊の時に銀幕デビューを飾り14歳の時には既にステージに立っていたという血統書付きのミュージカル・スターだ。言ってみれば、志ん生の息子の志ん朝みたいな存在である。1972年のボブ・フォッシー監督の「キャバレー」で、アカデミー主演女優賞とゴールデン・グローブ主演女優賞をダブル受賞して、それ以来、映画、ステージとエンターテインメントの第一線で活躍してきた。ちなみにこの「キャバレー」こそ我が10 favorite moviesの中の1本。あとの9本は今のところ秘密だ。つい最近もDVDで見直して改めて傑作の感を強くした。「キャバレー」も含めて全盛時のライザのドラマチックな歌唱力、ダイナミックなステージングは観る者聴く者を魅了する迫力に満ちている。ちなみにライザ・ミネリの歌う「キャバレー」は、俺のもっとも得意とするカラオケの持ち歌でもある。自分ではライザ・ミネリの歌う「キャバレー」とほとんど遜色ない出来と考えている。機会さえあればぜひ全国民に聴かせてあげたいくらいのものだ。
 しかし2001年、そのライザ・ミネリがウイルス性の脳炎を患らい、一時は危篤状態に陥った。何とか生命の危機は脱したものの、もしも治ったとしてもおそらく歌うことはおろか話すことも歩くことすら出来ないだろうと伝えられたのもこの頃である。歌って踊ることが仕事のミュージカル・スターにとって、これは「死」を意味する。当時、そのニュースに接して実に暗澹たる気持ちになったことを憶えている。
 しかし奇跡は起こった。ライザは蘇った。2002年6月、ライザはブロードウェイのビーコン・シアターで、7夜連続の復活ライブを行ったのである。そしてこの''Liza's Back!''こそ、その奇跡のステージを記録したアルバムなのだ。
 無論、往年の声量は願うべくも無い。ところどころ声もかすれる。CDなのであくまでも窺い知ることしかできないが、ステージ上のライザの動きもおそらくはかなり制限されたものだったろう。しかし、本人も含めて誰もが不可能と思っていたことが実現したのだ。志ん生はとりあえず高座に上がってただ座ってお茶を飲んでいる姿を見せてくれるだけでいい。手塚治虫は何なら色紙だけでも描いていてくれればいい。ファン心理とはこうしたものである。何とかもう一度、ステージ上に立つライザ・ミネリの姿を観たいというファンの祈りが天に通じた瞬間でもある。ライザ・ミネリのファンとしては、これ以上いったい何を望むというのか。
 しかし、そのライザ・ミネリの今のところの最新ニュースが「昨年暮れ、就寝中にベッドから落ちて意識不明」というもの。う~む・・・、しっかりせぇよ、ホントに。

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February 24, 2005

サイモン&ガーファンクル/オールド・フレンズ~ライヴ・オン・ステージ

SGsmall
 昨日に続いてちょっと音楽の話を続けるが、2003年にスタートしたサイモン&ガーファンクルの再結成ツアーを収録した「サイモン&ガーファンクル/オールド・フレンズ~ライヴ・オン・ステージ」がCDとDVDの両ソフトで出ましたね。この復活コンサートツアーの始まる直前、アート・ガーファンクルがマリファナの不法所持で逮捕されたなんてニュースが日本の新聞にも出てどうなることかと思っていたけど、何とか無事にツアーも終了できたんだなぁ。当然、CD・DVDの両方とも買いました。
 サイモン&ガーファンクルの公式ライブ音源としては、S&G全盛期のステージを収録した「ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ 1967」と1981年に行われた復活チャリティライブ盤の「セントラルパーク・コンサート」の二枚があったけど、それらのアルバムと較べると本人たちも観客も同窓会&大懐メロ大会的な雰囲気が強く伝わってきて、二人ともリラックスして演奏している反面、コンサートとしては何だかちょっと盛り上がりに欠けるような感じがしなくもない。バックバンドも以前のライブのようにマイケル・ブレッカーだとかスティーブ・ガッドのような名うての一流ミュージシャンが参加していないせいかえらく小粒で、はっきり言えば「ヘタ」な印象。演奏された曲目はS&G(含むトム&ジェリー)時代の曲とエヴァリー・ブラザーズ(特別参加のこの二人がまだ元気なのには驚いたが)の曲がほとんどで、ソロになってからの曲はわずかに「スリップ・スライディン・アウェイ」と「アメリカの歌」の二曲だけ。無論、俺のようなオールドファンにとってみれば懐かしい思いと共に楽しめたのは当然だけど、何だかもう二人とも「現役」を退いちゃったのかなぁ・・・という一抹の寂しさも感じました。噂ではポールは今、ブライアン・イーノのプロデュースの下、新アルバムを制作中とのことなので、そちらに期待だ。それにしてもポールもアートもすでに還暦超えちゃってるんだもんなぁ。とほほほほ。
 あ、もしもCDとDVDのどちらか一方を買うつもりだったら、収録曲数も多いし特典映像がいろいろ入ったDVDの方が値段もそう変わらないのでお得だよ。

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February 23, 2005

ブライアンの微笑み

B0002VL6WI.09 もう数日前のことになるが、第47回のグラミー賞の発表がありましたね。結果はご存じの通り、昨年物故したレイ・チャールズの「ジーニアス・ラヴ~永遠の愛」 が年間最優秀アルバムなど8冠達成(こんなこと)に終わった。決して悪いアルバムではないのだろうけど、グラミー賞も何だか日本の国民栄誉賞と同じような賞の与え方になっちゃったような感じだよなぁ。確かに「USA FOR AFRICA」の時の扱いを見ても、レイ・チャールズとボブ・ディランとブルース・スプリングティーンだけはちょっと別格……というのが大方のアメリカ人の心情なんだろうけどな。美空ひばり以来、日本にはもうこんな歌手はいないよね。
 もしかするとこのレイ・チャールズ旋風のワリを食ったんじゃないかと思えるのが、ブライアン・ウイルソンの「SMILE」だ。俺はCDに関してはほとんど前情報を入れずにCDショップで見かけた時に買うというスタンスなので、立ち寄ったCD屋でこの「SMILE」を見かけた時には心底仰天した。ともかくひたすら驚いた。なんでこの俺がこんなに驚いたのか分かる人には分かるとは思うが、ビーチボーイズの最高傑作と唱われる「ペット・サウンズ」リリースの後、完璧主義者のブライアンがほとんど完成させながらもお蔵入りさせていた幻の名盤がこの「SMILE」なのだ。このあたりの事情は、たとえば創元SF文庫で出ているルイス・シャイナーの懐かしロックSF「グリンプス」にも詳しいが、ともかくアメリカのポップス界のまさに伝説的アルバムであり、「待望久しい」どころか生きている間に耳に出来る可能性はまず無かろうと諦めていたアルバムがいきなり新譜として発売されちゃったのだ。言ってみれば、「コナン・ドイルの手によるシャーロック・ホームズのuntold storiesが何の予告もなくいきなり新刊で本屋に並んでるのを見つけた!……のと同じくらい吃驚した」と言えば多少はその気持ちも伝わるだろうか。ともかく「20世紀のアメリカのポップス界でもっとも偉大な天才は誰か?」と訊かれたとしたら、俺だったら迷わずブライアン・ウイルソンの名を挙げるね。
 で、当然、聴きましたよ、この「SMILE」を。……で、その結果は。

 いやぁ、あんまりたいしたことなかったんだ、これが(笑)。ホント、「名物にうまいもの無し」っていうか、こちらの期待感があまりにも大きすぎたせいもあるのかもしれんけどなぁ。37年もの間、これを待ってたのかぁ……と思うとちょっと気分が落ち込んじゃいましたよ。何だよぉ、これだったら今まで何枚か出してきたブライアンのソロアルバムの方がよっぽどいいんじゃないの? 結局、この「SMILE」、グラミー賞でもわずかに一部門(Best Pop Vocal Album)にノミネートされただけで終わりました。
 この「スマイル」に先だって2001年にニューヨークのラジオ・シティ・ミュージックホールで行われたブライアン・ウイルソンのトリビュート・コンサートを収録した「AN ALL-STAR TRIBUTE TO BRIAN WILSON」というDVDも観ました。参加メンバーはなかなかのもので、エルトン・ジョン、ビリー・ジョエル、デビット・クロスビー、カーリー・サイモン、ジミー・ウェッブ、ポール・サイモンといった大御所連中からリッキー・マーティン、ウィルソン・フィリップスまでが、次々とブライアンの名曲を気持ちよさそうに歌ってる。無論、ブライアン本人も最後に登場して「英雄と悪漢」「ファン・ファン・ファン」「ラブ・アンド・マーシー」などの懐かしい曲を歌っているが、容姿こそ衰えたが声そのものは昔とほとんど変わっていない。すごいよなぁ。参加メンバーのほとんどがブライアンの曲(つまりはビーチボーイズの曲)を原曲に忠実に歌っているのだが、ポール・サイモンの歌う「サーファー・ガール」はアレンジからしてモロにポール節で、中でも屈指の出来。この縁かどうかは知らないが、この数ヶ月後にはポール・サイモンとブライアン・ウイルソンの二人で全米ツアーに回っているほどだ。それと、このコンサートのプロデュースをフィル・ラモーンが務めているのも嬉しい点。このフィル・ラモーンはサイモン&ガーファンクル、ビリー・ジョエルなどのレコード・プロデュースを務めた大物プロデューサー。そして、今年のグラミー賞で幾多の栄誉に輝いたレイ・チャールズの「ジーニアス・ラヴ~永遠の愛」 も、このフィル・ラモーンのプロデュース作品なのだった。良かったぁ、何とか話が最初に戻って(笑)。

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February 21, 2005

今日届いたCD

jacketamazonに注文していたCDが届く。Kenny Loggins "Kenny Loggins Alive"ジミー・メッシーナ"オアシス"Paul Simon"Still Crazy After All These Years "Willie Nelson"Willie Nelson and Friends: Live and Kickin'"、の四枚。驚くべきことに最後のウィリー・ネルソン以外の三枚は既にアナログ盤なりCDなりで持っているものばかり。いやぁ、これぞメーカーの思う壺って言うか、ビデオソフトからDVDへの買い換えと同じようなことをここでもやってるよなぁ、この俺は。しかし、俺的にはそれぞれに買うべき理由があって、元ロギンス&メッシーナのそれぞれのソロアルバム"Kenny Loggins Alive"と"オアシス"こそCDへの単純な買い換えなのだが、ポール・サイモンの"Still Crazy After All These Years "は国内盤未収録のデモ三曲が入っているのと、Willie Nelson and Friends:" Live and Kickin'"にはそのポール・サイモンがウィリー・ネルソンとデュエットをしている"Homeward Bound"が納められているからなのだったぁぁぁぁ! ……などと声高に叫んでみても共感してくれる人はたぶん少ないんだろうけど……。
それにしても、つい先日同じくネットで注文を入れたHMVと較べると、amazonの方が梱包が丁寧だし納期も結構早かった。HMVの方はクレジット決済じゃなかったしな(これは、俺が決済方法をそのように選択してたせいかもしれないけど)。

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