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September 04, 2006

【過去記】サイン会に赴く

▼7月某日、日曜日。お誘いがあったので、某書店で開催されたサイン会に赴く。
 サイン会の主は芥川賞作家の金原ひとみ。そう、「蛇にピアス」の人だ。はっきり言って俺にはまるで興味のないジャンルの作家なのだが、23歳で美人・・・という点に関していえば若干の興味が無いこともない。
 間近で見ると、なるほど確かに美人である。身体もモデル並みに細いしねぇ。もしも日本の女流作家で美人コンテストを行えば、確実に上位三人のうちに選ばれるよなぁ。あとの二人は○辺聖子と林真○子あたりか(嘘)。こんな可愛い女の子が小説の中では「○○○○」だとか「△△△△」といった卑語を平然と書き連ねるのだから、やはり文学というものは怖ろしいものである。
 サイン会という場に駆けつけた経験はごく少ないが、日曜の午後に開かれているこのサイン会に来ているのは、「若い女の子たち」と「おじさん」という二つの派閥に二極化されている。強引に分けるとすれば幸いにも俺は若い女の子組ということになるのだが。
 順番が巡りいよいよ俺の番となる。頭を垂れ貢ぎ物を頭上に掲げて若き女帝に傅く家来のようにしずしずと金原ひとみ嬢の前に進み出る俺。貢ぎ物として捧げ持つのは事前に購入しておいた「名古屋名物 一口ウイロ」である。
 サインに名入れを希望する人用に事前に用紙が配布されているので、ウイロと一緒にその紙を差し出す。そこに書かれた名前を一目見て、クスリと吹き出す金原ひとみ嬢。いいよなぁ俺は、名前だけでウケが取れて。
「あのぉ・・・、名前には『様』も付けますか? それとも『未読王』だけで?」と可愛い顔で問う金原嬢。
「是非ともお願いします。『未読王様』で」と俺。それを聞いてもう一度、クスリと笑われた金原ひとみ嬢なのであった。
 図に乗った俺は更にお願いをすることにした。
「あのぉ・・・、名前の横に『愛を込めて』と書いて戴くわけには参りませんでしょうか?」
 俺の前にいたおっさんが本にサインを受ける際に図々しくそうねだっていたのを聞き逃すような俺ではない。困ったような顔をしながら、ひとみちゃん(←おおっ、芥川賞受賞作家をついに「ひとみちゃん」呼ばわりだぁ!)はそのおっさんの頼みを快く聞き入れたこともこの俺は知っている。ましてや、プレゼントとして「名古屋名物 一口ウイロ」をわざわざ持参してきたこの俺である。これで断られるはずがないではないか。
「ええ、喜んで」とひとみちゃん。
 もののついでに、もう一つだけお願いしてみることにした。
「おのぉ・・・、もしもお手数でなければ、『愛を込めて』の横に『二人きりで過ごしたあの夜の甘い思い出とともに』と書いては戴けないでしょうか?」と俺。

それは出来ません」と、きっぱり拒否するひとみちゃんなのであった。やっぱりな。俺もこれはちょっと無理っぽいかもな・・・と思ってはいたんだけど。
 サインを終えて握手もしてもらう。何とも細い指だぁ。この指であんな卑猥な言葉を。そのままサイン会が終わるまで握っておいてやろうかと思ったが、俺の後ろでまだ順番待ちの客もいるので、渋々手を離す。

 無事にサインを貰って、旧知の女性編集者と立ち話で雑談する。実はこのサイン会、俺はこの御方に呼ばれたのであった。日本の文芸界を陰で牛耳っていると囁かれているこの御方の依頼を断ることが出来るほど、俺は豪放でも磊落でもないのである。ここだけの話だが名古屋名物 一口ウイロだって、ひとみちゃんに差し上げたものの倍の値段を奮発してこの女性編集者にお土産として手渡しているのである。
 折しも今は、芥川賞直木賞の選考段階。今度の受賞の行方は如何なものかと尋ねてみると明快に即答が返ってきた。受賞の理由を訊くと「私が気に入ったから」。そうでしょうとも。両賞の発表はもうじきだが、おそらくそうなるであろうと俺はその場で確信した。
 ひとみちゃんとともにそのまま新幹線で帰京するという女性編集者からは別れ際に握手を求められたが、気づかないフリをしてそのまま立ち去る。だってぇ、せっかくのひとみちゃんの手の匂いが、そんなことで消えると困っちゃうしぃ・・・。(注1)

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