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August 15, 2006

若葉書店開店・その後

Wakaba3▼奥ゆかしいというのかまるで商売っ気がないというか、はたまたやる気が全くないと言うべきか、ぽかぽかは自分の店が開店したことを世間に少しでも知られるのを怖れているかと思えるほどにひっそりと古本屋を始めた。普通ならせめて開店記念の粗品を配ったり常連客となりそうな客には新規開店記念全品無料サービスを挙行するとか紅白餅を屋根から撒くとかAV女優を呼んで店内で撮影会を実施するとかするもんだろうに。何せ自分のホームページで開店の告知すらしてないんだもんなぁ。故に「若葉書店」開店に至っても新規オープンらしい華々しさは一切見受けられない。開店前日に訪れた際には、あまりの殺風景な店内の雰囲気に「何なら開店祝いの花でも贈ってやろうか」とついつい口にしてしまった。「何ならついでに店のPRもしてやるぞ」
 週が明けた月曜日、開店祝いの花を携えて再度「若葉書店」に向かう。おっと、PRをしてやるぞと言った割には前回の日記では店の詳細をまるで書いていなかった。
 若葉書店は名古屋市熱田区六番町の交差点から南に向かったところ、俺の足で約20秒ほど掛かったので、ほぼ200mの地点にあります。営業時間は昼の12時から夜九時まで。今のところ火曜定休の予定ですが、客が来なければそのうちに定休日はどんどんと増えていくかも知れません。これ以上詳しい住所や店の電話番号は、俺のライヴァルを増やすことにもなりかねないので残念ながら教えられないね。
 店に到着すると、前回同様、またガラス戸が閉まっている。力ずくで何とか戸をこじ開けて店内に入る。
「うわっ、未読さん。どっ、どうやって店の中に!?」
「いや、錠の部分のガラスをこのガラス切りを使って……。いやいや、そんなことはどうでもいい。何で店を開けてないんだよ。もうオープンしたんだろにっ!」
「いっ、今、開けようと思ってたとこなんですよぉ」

Wakaba4▼「ほれっ」と買ってきた可愛らしい鉢植えの花を渡す。写真が小さくてよく見えないだろうが、花に添えられたカードには祝 「笑っていいとも」ご出演と書いてあるのだ。
「この花、きっと高かったんでしょうね」と値段ばかり気にするぽかぽかであった。そんなぽかぽかを安心させるように、「心配しなくてもいいぜ。その代わりと言っちゃあ何だが、毎月、みかじめ料としてショバ代を戴きに来るから」と言う俺なのであった。地回りのヤクザもんかぁい、この俺は!

 「ところで……本当に店はオープンしたんだろうな?」と尋ねる俺。思わずそう訊きたくなるくらい素っ気ない店内の様子なのである。その問いに対して「えぇ、日曜日から店を開けました」と答えるぽかぽか。よぉし、ホントに店を開けたとなれば、これからは俺の好き放題やりたい放題である。前回来た時にはまだ開店前ということもあり多少の遠慮もあったのだが、これからは何の気兼ねもいるものか。

 ということで、この日買ったは次の本。
 E・ガボリオ「ルコック探偵」(旺文社文庫、1979、500円)
 アルフレッド・ジャリ「馬的思考」(サンリオSF文庫、1979、1,000円)
 三橋一夫「ぼんくら社員と令嬢」(春陽文庫、S46カバ欠、100円)
 野田昌宏「宇宙船野郎」(秋田書店、S45、1,000円)
 W・ジョンストン「ベン・ケーシー 暗い秘密をもつ少女」(学研新書、S38、500円)
 加納一郎「SFディメンション・クイズ」(日本文芸社、S60、500円)
 友成純一「ホラー映画ベスト10殺人事件」(扶桑社、1989、300円)
 立川談志「ナムアミダブツ」(光文社カッパブックス、1998、300円)
 小松左京「日本を沈めた人 小松左京対談集」(地球書館、S49、800円)
 河野典生「憎悪のかけら」(七曜社、S37カバ欠、300円)
 市来英雄「海底に咲く花」(南日本新聞開発センター、S52、1,500円)
 中野実「火星から来た男(上・下)」(東京文藝社、S33、1,500円)

Wakaba1「ルコック探偵」と「馬的思考」はダブり確定。河野典生「憎悪のかけら」もダブり間違いなしだというのに、なんで買っちまうんだろ。しかもカバ欠なのに……。「SFディメンション・クイズ」「ホラー映画ベスト10殺人事件」の二冊もダブっていないことを祈るばかりである。
 わけの分からない本は最後の二冊だ。「海底に咲く花」の副題は「SF虫歯予防大作戦」。とほほほほ。歯医者さんの書いたSF仕立ての虫歯予防啓蒙本のようである。「火星に咲く花」ならばまだ聞いたことはあるんだけどねぇ。内容は「虫歯版・ミクロの決死圏」といったところ。時は21世紀後半。海底都市マリンフラワーでは世界連邦の大立て者であるミスターX氏(覆面レスラーかっ!)が突然の病に倒れ死の淵を彷徨っている。その病の原因は「虫歯」であった(おいおい)。ミスターXの虫歯を治療するために、極超小型ミクロロケット「スーパーオーラル一号」が出動することになった。しかし、悪の宿敵‘ミスターキラー’(覆面レスラー2号かっ!)がそうはさせじと様々な妨害を仕掛けてくる(例えば砂糖水を飲ますとか……、いや、マジで(笑))。スーパーオーラル一号は虫歯の原因であるプラーグ怪獣と戦い、無事、ミスターXを死の淵から救い出すのであった。最後はミスターXが歯磨きをする場面で大団円。めでたしめでたし。

 ……何じゃい、こりゃあ!

 おまけにこの本、小説部分は本の二分の一までで、残り半分は「砂糖と虫歯」という単なる虫歯予防のエッセーなのである。もしかして騙されたのか、俺は?

 もう一冊は、中野実の「火星から来た男」。ぽかぽかがしきりにこの本を薦める。「これ、SFに間違いありませんぜ、旦那。何せ題名が『火星から来た男』ですもん」
「だけど、中野実といえば小説のタイトルに『お嬢さん』だとか『坊ちゃん』だとか『令嬢』だとかの付いた明朗小説を書きまくってた人だろ。SFなんて書いてたかなぁ」
「間違いないですってば。何せ『火星から来た男』というくらいなんですから」とぽかぽか。
 仕方なく買って帰るが、家に帰って目次を眺めると、最初の章のタイトルがいきなり「へそくり問答」だ。SFか? 続く章題を見ていっても「内助の功」だとか「鎌倉夫人」というようなものばかり。これってSFか、ホントに??? よもや騙されたんじゃあるめぇなぁ?

Wakaba5▼そうこうするうちにぼつりぼつりと他の客も入ってくる。お世辞半分に「おお、店は結構流行っているようだなぁ」と言うと、ぽかぽかは客がいるにも関わらず「いやぁ、そうでもありませんよ。開店した日から毎日、2時間立ち読みに来る中年男だとか、ろくな客が来やしない」とこれ見よがしに大声で言う。つくづく客商売に向いていない奴である。客の一人が一本のエロビデオのジャケットを俺に向かって見せながら、「お客さん、このビデオに出ている××××子って知ってる?」と尋ねてくる。「いや、知りませんが」と正直に答えると、「そうかぁ、2時間ドラマの脇役あたりではそれなりに有名な女優なんだけどねぇ。顔に見覚えはない?」と残念そうに言う。「2時間ドラマとかはほとんど観ませんし」と答えると、「普通のAVみたいに単に裸が出てくるモノじゃなくて、最近はこの手のドラマ仕立てのモノにハマッててねぇ」
「はぁ、そうですか」と気のない返事をすると、「いやね、あんたも好きそうな顔してるから、てっきり同じ趣味なのかと……」。
 ……確かにろくな客は来ていないようだった。

▼帰り際に、先日買った本の中から「乱視読者の冒険」を返品する。家に帰ってじっくりと表紙を見たら、間違いなく持っていると確信できた本なのであった。確信したどころか、この本、別府の古本屋で買ったことまで思い出したわい。

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